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産地を追って 号外 日本一ののり産地、有明海を襲った豪雨と水害

1 ひと月後に控えた海苔養殖への心配

このような現状を見ますと、9月上旬から支柱の建て込みが始まり、10月中旬頃から採苗が始まるのり養殖時期を直前に控えた今回の水害による被災の復旧を急がなければなりません。

福岡有明海漁連が被災地区ののり漁家に直接調査した28日現在の福岡有明海全地区の中間集計では、主要な資材などの被災状況は、次のようになっています。

◇漁船被害(全損、破損、流失など船外機を含む)=51隻
◇漁港構築物(クレーン、桟橋、浮桟橋など)=29基
◇杭瀬(係留ポール、係留杭、孟宗竹など)=1,259本
◇のり乾燥小屋(乾燥機、周辺機器など)=58棟
◇培養場(かき殻など)=39棟

そのほか、漁具倉庫、冷凍施設、組合事務所などの被災もあります。

中でも、中島漁協は組合員58軒のほとんどが浸水による機械設備の被害を受けているため、最も大きな水害被災地区になっています。

被害調査はまだ続けられていますが、漁港に必要な係留杭や養殖資材などの流失、水没被害などさらに多くの被害が出て来そうです。

上流からの泥流が漁船航路の川底から養殖漁場の干潟にまで広範囲に及んでおり、漁期までに復旧しなければなりません。干満の差を考慮しながらの浚渫(しゅんせつ)、流木やごみの除去など多くの作業が待ち受けており、福岡有明海漁連としては、公共事業として申請するための状況調査、作業費用の算出などの事務作業をいそがなければなりません。

のり漁家にとっては、漁船の修復、確保、原藻洗い機、ミンチ、全自動のり製造機、選別機、結束機など多くの周辺機器の修復、確保などが控えています。

さらに、気懸かりなことは、濁流に見舞われた培養場のかき殻で育っているのり種(糸状体)が通常の状態に育ってくれるだろうか-ということです。福岡県水産海洋技術センター有明海研究所の福永剛のり養殖課長は、培養場に濁流が浸水した場合、「かき殻を充分に水洗いして、水槽を洗い海水を入れ替えることで様子を見るようにしたい」と語っていました。充分洗っても雑菌がかき殻に浸入していることも考えられるということで、しばらく様子を見ることになるようです。

昨年の秋芽網生産が気象条件の変動が激しく思うような生産が出来なかったこともあり、今漁期の秋芽網生産に意欲を燃やし、慎重に採苗時期を検討していただけに、今後の糸状体の生育が注目されるわけです。

福岡有明海漁連としても、被災状況の全容を早急にまとめ、理事会を開いて今後の対策について、国、県、地元自治体との協議を行い、新のり時期までの具体的な行動計画を立てることになりますが、既に早期復旧を目指して活発に活動しています。

宮城県の東日本大震災による減産が続く中、全国生産数量の50%を占める九州有明海の中でも30%強(全国比率15%強)を占める良質のりの産地だけに、福岡有明の今漁期に向けての早期復旧が現在の最大の注目点です。

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