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リレーエッセイ 2014・秋
海藻の栄養 -ミネラル- 1/2/天野 秀臣
熱中症

今年の夏も最高気温が35℃を超える猛暑日が多く、かなり体力消耗をした方も多いと思います。8月30日までの猛暑日の日数は群馬県館林市で23日、同県伊勢崎市と埼玉県熊谷市で19日など、栃木県、山梨県、岐阜県、千葉県、東京都、京都府そのほかでも内陸部での猛暑日が目立ちました。9月に入り、朝方は大分涼しくなってきたので、昨年の大分県日田市の猛暑日38日に匹敵するようなことはもうないかもしれません。天気予報では連日のように熱中症の危険があると注意が出され、十分な水分とミネラルの補給、我慢せずに適切な冷房の使用が呼びかけられました。町中ではミネラル入りのスポーツドリンクを持っている人々も目立ちました。

表1.人に必須なミネラルの種類と
そのミネラルを多く含む食品

ミネラルの種類 多く含んでいる食品の例
多量ミネラル
ナトリウム 食塩、醤油
カリウム 果物、野菜、芋、豆類、干物
カルシウム 牛乳・乳製品、小魚、海藻類、大豆製品、緑黄色野菜
マグネシウム 豆類、種実類、海藻類、魚介類
リン 魚介類、牛乳・乳製品、豆類、肉類
微量ミネラル
海藻類、貝類、レバー、緑黄色野菜
亜鉛 魚介類、肉類、穀類、種実類
レバー、魚介類、種実類、豆類、ココア
マンガン 穀類、豆類、種実類、小魚、豆類
ヨウ素 海藻類、魚介類
セレン 魚介類、肉類、卵
クロム 魚介類、肉類、卵、チーズ、穀類、海藻類
モリブデン 豆類、穀類、レバー

注)種実類:穀類、豆類以外の種子及びその製品。
らっかせいを含む。(農林水産省)

暑いと大量に出る汗の成分は、99.5%が水分、残りの0.5%が塩化ナトリウム(塩分)、尿素、乳酸のほか、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類です。汗のナトリウムは、通常程度の汗の量では汗腺で再吸収されていますので、塩分の補充は不要です。汗が大量になると体内への再吸収が追いつかず、血液中のナトリウムの割合が少なくなります。この場合は水分補給だけではだめで、少量の塩分補給が必要になります。それは、ミネラルは人間の体内では作ることができないためです。熱中症は発生した当日の水分不足から起こるだけではなく、数日前からの水分とミネラル不足が原因でも発症するという説もあります。家の中でも熱中症になる人がいるとの報道を聞き、それ以来私も熱中症を気にするようになりました。私はミネラル補給のためのスポーツドリンクというものは未だかつてほとんど飲んだことがありませんが、仕事柄海藻にはミネラルが多いということは知っていました。そろそろ食欲の秋となりますので、日常の食生活で海藻がミネラル補給にどの程度役立つかを整理して紹介しましょう。

ミネラルとは

表2.海藻によるミネラルの濃縮

元素 濃縮係数
濃縮係数の大きいもの
1,000 ~130,000
ヨウ素 500 ~ 60,000
クロム 1,600 ~ 50,000
亜鉛 700 ~ 33,000
マンガン 1,500 ~ 26,000
セレン 10,000 ~16,000
リン 600 ~ 8,000
700 ~ 2,800
濃縮係数の中程度のもの
カルシウム 0.5 ~ 100
モリブデン 100
濃縮係数の小さいもの
カリウム 0.15 ~ 15
マグネシウム 0.4 ~ 6
ナトリウム 0.1

(天野秀臣、1991)

ミネラルには、量は少ないが我々の栄養素として欠かせないことがわかっているものが16種類(ナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素)あります。そのうち厚生労働省が摂取基準を定めているのは、イオウ、塩素、コバルト以外の13種類です。ミネラルは、熱中症のように単に汗で失った分を補給することが重要であるだけではなく、普段でも骨や歯を作り、血液凝固や筋肉収縮、浸透圧調整、ヘモグロビンや各種酵素の生産、体のなかでの代謝などに働いている重要なものです。日常生活ではどのような食物に注意したら摂り入れやすいかを表1に示しました。小魚や乳製品にカルシウムが多いこと、果物、野菜、芋、リンゴなどにカリウムが多いことなどは既によく知られたことですが、海藻がかなりミネラルを含むことが分かります。

なぜ海藻にミネラルが多いのでしょう。海藻は海中に生育し、海水中の全てのミネラルをよく蓄積します。しかし、海藻中の各ミネラルの比率は海水とは異なります。海水中に多量にある塩素、ナトリウム、マグネシウム、カリウムが海藻中にも多いのは当然ですが、微量にしかないクロム、亜鉛などでも極めて高い濃縮係数により海藻内に蓄積することが特徴です。表2に海藻によるミネラルの濃縮係数を示しました。濃縮係数が大きいものは、鉄のように1,000 ~ 133,000というものがあります。小さいものは、ナトリウムのように0.1しかありません。一般に、海水中に多量に存在するミネラルの濃縮係数は小さく、微量に存在するものは高い濃縮係数となる傾向があります。また、この表からは読み取れませんが、海藻の種類によって多く含まれるミネラルは異なります。よく知られているのは、ヒジキ、ワカメはカルシウム、ナトリウム、カリウムに富み、褐藻類はヨウ素含量が高いことです。

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