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産地を追って no.2 新のり養殖始まる

5 「価値」あるのり需要拡大が発展のカギ

新のり生産シーズンに入りましたが、この漁期(今年10月~翌年4月)の生産枚数がどの程度になるのか、今後の気象・海況に大きく左右されるためなかなか見通しが立てにくい事ではあります。

しかし、過去の実績から推定した場合、宮城県の生産枚数が大幅に減少することが予想されますので、80億枚相当になりそうです。現在の国内需要総枚数は85億枚相当と推定されていますので、単純に5億枚相当が不足する計算になります。

しかし、実際に販売されているのりの価格を見ますと、生産者の生産コストギリギリの価格で落札されたのりが、包装材、加工費、流通費などを加算して算出して見ると、産地での落札価格を下回るのではないかと思われる価格で販売されています。それほど、激しい価格競争が行われているわけです。

値を下げて安い価格で販売するためには、嗜好食品としての「価値」を無視した販売にならざるを得ません。安い品質の原料での低価格による販売競争が行われているのです。このような販売競争が続くことは、その産業の発展を阻害し、ひいては消費者の方々の不利益になることは明らかです。

そのことを質すと「他の食品が低価格で販売されているのに、のりだけが質を上げて値を上げても販売が増えるような消費市場ではない」と言う返事が返ってきます。

でも、今のような販売状態が続くと、まず、生産部門がコスト割れになり、のり漁家が減少し、生産数量はますます減少することが予想されます。また、のり商品の製造販売業者も経営が成り立たず、廃業、倒産に追い込まれることになるでしょう。

その不足分は、韓国や中国ののりを輸入することで賄えばいいのではないか-という声も聞きます。しかし、それは安い海外ののりを輸入することになるため、国内ののり産地はますます窮地に追い込まれ、のり養殖漁業そのものが成り立たなくなり、ひいては、国内のり販売業者にも大きく影響してくるでしょう。

永年の経験と資料の蓄積で、地場の漁場環境を熟知して、安心、安全なのり作りに最大限の注意を払い、最高水準の養殖技術に裏打ちされた、世界一ののり生産国として誇りを持って生産してきた「国産のり」を消費者の皆様にお届け出来なくなってしまいます。

このような国内のり産業そのものを窮地に追い込むような事を避けるためにも、関係者は、世界一おいしいのり生産国として国内外の消費者の方々にアピールするため「のりの価値」を高める活動を行いたいものです。

その一つの方法として、国内の食生活改善活動と共に行動することも大切ではないでしょうか。ごはん食の普及活動、乾物食品の普及活動など、「和食普及」の動きが見え始めています。3大成人病(心臓、糖尿、高血圧)を少しでも減らすためには、いま一度、「日本食」を見直す必要があると言われています。

もちろん「洋食」にものりの活用が広がっています。マクガバンレポート(アメリカ上院の「国民栄養問題アメリカ上院委員会」が1977年に発表した調査報告書の委員長を務めたジョージ・S・マクガバン上院議員の名称で呼ばれる報告書)を引用するまでなく、日本国憲法の第25条に述べられている「健康で文化的な生活を営む権利」の一部分を拝借して、「健康で日本の食文化を満喫できるのりを活かした食生活を営む権利」としたいのですが・・・。

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