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産地を追って no.16 のり産業の在り方再考の時

【平成27年4月6日執筆、平成27年4月8日掲載】

1 転換期迎えたのり産業界

平成26年度ののり生産もあとひと月余りになりました。各生産地とも生産終期の追い込みに向っています。国内生産数量の60%を占める最大の産地有明海では、生産がほぼ終りを迎えています。

今漁期は、全国的に10月の天候が不順で生産のスタートが遅れたものの、3月31日現在の全国海苔生産実績は、昨年同期の68億枚を上回る約76億枚に達しています。しかし、昨年、一昨年の生産実績が80億枚を下回っていたこともあり、最大需要業界の業務用原材料が不足していたため、通常は買わない低質品まで買い進む姿が見られ、低質品の価格が高くなり、全国の平均単価は1枚当り10円65銭で昨年同期(9円27銭)より1円38銭も高くなっています。このような産地価格が4月末までは続きそうで産地価格は質の下落に関係なく高い相場になっています。

しかし、このような産地価格は長続きするものではありません。後継者が少なくなりのり養殖漁家の高齢化と共に減少数は年間3桁を維持すると見られているため、生産数量を80億枚相当に維持するのが難しいだろうと見られています。低質品を高値で買い進んだのり流通業者の間では、早くも商品価格の値上げや一つの商品に入れる枚数を減らして事実上の値上げを考えている商社もいますが、一般食品業界では質を上げて「価値」を高めて10~20%相当の値上げを行なう動きが見られる中で、質を下げて値上げを考えているのり商社の感覚は、食品業界ので早くも顰蹙(ひんしゅく)を買っているようです。

「嗜好食品」の「価値」の在り方を見失っている現状では、さらに需要の減退を推進することになるでしょう。

やはり、高品質でおいしいのりがその価値に相応しい価格で消費者に届けられることがのり需要の促進につながるのであり、それがのり産業界にとって最も重要なことです。しかし、のり流通の現状を見ますと、消費者価格の主導権は大型小売店やディカウントストアーに握られており、低価格で販売される商品が中心に仕入れられていますが、今年度の低価格商品に対する消費者の反応が注目されることになります。

低質の低価格原料の仕入競争が始まり、低質原料の産地価格が次第に競りあがり、ディスカウントストアーなどに納品する価格に合わせるのが難しい状態になっています。

一方、産地では低価格品原料が売れ筋の中心になっているため、おいしいのりを作ろうと頑張っている漁家が次第に少なくなってきました。売れ筋製品を大量に生産しなければ、のり養殖漁業の経営が厳しくなっているのです。その結果、のり養殖漁業を廃業する漁家が毎年3桁に上っています。

おいしい質の良いのり作りに対する関心が低下しています。その結果、のり養殖漁業に従事する後継者も少なくなっています。上質のりが価値のある値段で販売されなくなっているため、コンビ二おにぎり、外食産業などの業務用、市販の味付けのりなどの低質低価格商品向けののりを大量生産してのり養殖漁業を継続するための必要経費を確保する生産を続けざるを得ない状態になっています。

流通業界も生産量が減少している中で競争入札による原料仕入を行っていますが、消費者価格を引き上げることが非常に難しいため、在庫減少で値上がりしている低価格商品の原料を確保することは低利潤につながり経営の危機を招きかねません。その結果、転廃業するのり商社が出るのではないかという懸念の声も気かれます。のり産業の在り方を根本的に見直さなければならない大きな転換期にあるのではないでしょうか。

2 後継者の育成が急務

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