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リレーエッセイ 2021・春
海藻の旬 2/2 天野秀臣
ワカメ

ワカメは秋に胞子による種付けをし、育苗期を経て2~3月にかけて急速に成長します。春に2m前後に成長したものを収穫し、5月末ごろには収穫が終わります。ワカメの人気はシャキシャキした食感と加熱後の緑色とされ、旬の季節は3~5月とされます。ワカメ葉体のタンパク質含量は乾物100g当たり17g程度(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より換算)ですが、表2に示すように4月から増加し、5月上旬にピークとなります。その後5月下旬から7月にかけて減少し、葉体は夏には枯死します。ワカメ葉体には食物繊維のアルギン酸が乾燥葉体100g当たり20~30gと多いのですが、これも季節変化をしていることが表2から分かります。“めかぶ”は食物繊維フコイダンを乾物100g当たり8g程度含みますが、葉体では乾物100g当たり1.5gと少量のために季節変化は明らかではありません。

なお、ワカメには褐藻特有のカロテノイドであるフコキサンチンが含まれています。その含有量はクロロフィルaの含有量と高い正の相関があるとされ、若い葉体ほど両色素ともに含量が多いといわれています。また、量的に多いミネラル、体内でビタミンA効力を持つβ-カロテンの含量についても季節変化があるとされます。

ワカメ

ワカメ

表2 ワカメ葉体のタンパク質および
アルギン酸含量の季節変化

季節 タンパク質 アルギン酸
4月10日 21.6 -
4月25日 21.1 24.4
5月10日 29.6 24.7
5月24日 11.3 27.9
6月  9日 11.8 30.7
6月26日 10.9 26.9
7月10日   8.4 28.9

(船岡ら、1968を参照して作成)
乾物100g当たりのg

ヒトエグサ

ワカメとほぼ同じ時期に、鮮やかな緑色の生ヒトエグサが店頭に並びます。ヒトエグサの特徴は強い磯の香りと葉体の薄さです。したがって食べてもシャキシャキ感はありませんが、味噌汁などに入れて香りを楽しむことができますし、加熱しても緑色が残ります。“のり佃煮”の主原料は緑藻であるヒトエグサですが、近年は紅藻であるノリだけで製造したものや、ヒトエグサにノリを混合したものも生産されています。なお、“のり佃煮”の黒紫色は調味料の醤油によるものです。

ヒトエグサの旬は2~4月とされ、その後は乾燥されたものが出回ります。表3に示すように、タンパク質は少なく、炭水化物が極めて多いです。ヒトエグサの特徴である香りは、ジメチルスルフィドと硫化水素が主ですが、これらは前駆物質ジメチルスルホニオプロピオナート(別名ジメチール‐β‐プロピオテチン)とともに活性酸素を除去することで抗酸化効果を発揮します。その他、光合成色素のルテイン、β-カロテン、クロロフィルaの分解物フェオフィチンaも抗酸化作用を持つことが知られている成分です。また、12~5月にかけてのヒトエグサのメタノール抽出物には強い抗酸化活性があり、特に1月のヒトエグサで最も強くなります。しかし、この抗酸化性はその後の生育に伴い弱まるとされています。

ヒトエグサ

ヒトエグサ

表3 ヒトエグサ葉体のタンパク質および
炭水化物含量の季節変化

季節 タンパク質 炭水化物
12月 7.57 57.15
1月 7.39 55.98
2月 5.86 56.10
3月 6.08 55.26

乾物100g当たりのg

終わりに

以上、3種類の海藻を例に挙げて旬について述べました。含有する成分の数値そのものは、生育中の様々な要因によって変化することが知られています。したがって、今回のエッセイに書かれた数値は一つの例としてお考え下さい。海藻は脂肪が少ないこと、甘味がほとんどないことが他の食品と異なります。しかし、各海藻には特有の風味がありますので、旬の季節にぜひ海藻をお楽しみ下さい。

なお、生物としての海藻の名はカタカナで、食品(商品)としての海藻の名は漢字またひらがなで記述しました。

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執筆者

天野 秀臣(あまの・ひでおみ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重県保健環境研究所特別顧問、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士

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