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リレーエッセイ 2020・夏
海藻サラダ 2/2/天野秀臣

その他、加工によっていずれも白色となったトサカノリ(図7)およびミル類(図8)がそれぞれ少量含まれます。また、メーカーによっては糸寒天(図9)、白いキノコのシロキクラゲ(図10)を使用する場合もあります。1975年に白色化に苦労したトサカノリは、現在は収穫後まず加工工程で藻体を緑色にし、次いで水と日光で繰り返し晒して白色にしています。当時は海藻をまず緑色にすることに思い至らなかったために、トサカノリの白色化が完成しなかったのかもしれません。海藻サラダを食べるたびに、かつてのトサカノリの白色化のことを思い出します。

図7 白トサカノリ、図8 白ミル、図9 糸寒天、 図10 シロキクラゲ

食品の色は食欲に影響し、オレンジ系や赤色系の色は食欲を促進し、黒、茶、紫系の色は食欲を減退させます。したがって、海藻サラダの赤色系海藻には見た目の美しさだけではなく、食欲を促進する効果も考えられます。

海藻サラダの有用成分 ―食物繊維―

海藻は、タンパク質、脂肪、糖質、食物繊維、ミネラル、ビタミンなど多くの成分を含みますが、量的に多いものは食物繊維とミネラルです。このために、海藻サラダは低カロリーで高ミネラル含量が特徴の一つになります。現在、日本人の食物繊維摂取量は1日当たりの推奨摂取量に対して成人男性で約4g、成人女性で約3g不足しています。海藻サラダ中の食物繊維含量は、一人一食(乾燥した海藻で3~4g)当たりおおよそ1~2gです。海藻サラダ一食分だけで食物繊維の不足を解消はできませんが、海藻サラダは食物繊維補給に有効な食材と言えます。

食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がありますが、海藻は野菜と比較すると一般的には水溶性食物繊維が多いことが特徴です。海藻サラダの主要原料のワカメでは、総食物繊維が乾燥ワカメ100g当たり68.9gあり、そのうち9.0gが水溶性食物繊維で、59.9gが不溶性食物繊維と言われ、また、乾燥海藻サラダ重量のおおよそ10%配合され、海藻サラダの色調に重要な赤色のトサカノリは、総食物繊維含量が乾物100g当たり36.8gで水溶性食物繊維量が24.3g、不溶性食物繊維量が12.5gと言われています。

不溶性食物繊維の生理作用としては、便重量の増加、大腸ガンの予防が、水溶性食物繊維の生理作用としては、整腸作用、血清コレステロールの低下、食後血糖値の上昇抑制がよく知られています。整腸作用のためには、食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2:1で摂取するのがよいと言われており、ヒジキ、ナガコンブ、スジアオノリの不溶性対水溶性の食物繊維含量はおおむね2:1です。

終わりに

海藻サラダは、日常の食生活に定着した食品です。これまで長年にわたりシャキシャキした食感と彩りを楽しんできました。今後は海苔が加わって、味も香りもよい海藻サラダができることを期待しています。

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執筆者

天野 秀臣(あまの・ひでおみ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重県保健環境研究所特別顧問、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士

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