のりの「価値」再評価(価値を高める)活動を < 産地リポート産地情報海苔増殖振興会ホーム

産地情報 | 産地リポート

産地を追って no.15 のりの「価値」再評価(価値を高める)活動を

【平成27年1月20日執筆、平成27年1月21日掲載】

平成26年度の新のりの生産が始まりました。今年度は10月に入って台風が相次いで日本列島を通過したため、各産地とも慎重にのり養殖をスタートさせました。また、今年度は閏9月ということも影響してか暖かい日が続き、海水温が思うように下がらずのりを育てる作業にかなり手間をとる状態になりました。

しかし、深夜から早朝にかけてのり網に確り根を張り生長しているのりを充分日光浴をさせてうまみ成分のアミノ酸を含ませるなど、確りした細胞を持ったおいしいのりを育てるための、のり漁家の働きが昨年11月から本年4月まで続きます。

1 のり養殖作業の厳しさ

のり漁場に張込んだ網に育っているのりが20cm以上に育ったところで摘み取り、そののりを製造工場に運び込んで大きなタンクに入れて充分洗い、きれいなのりを2ミリ程度に刻み、一度に10枚(1枚は19cm×21cmの規格)以上抄き上げるのり製造機に送り込み、およそ2時間で約1万枚ののりを好き上げて乾燥します。のり漁場で漁船一杯になるほど摘み取ると、一度に製造機で乾燥させる枚数は4~5万枚相当になります。

全自動のり製造機で好き上げられたのり製品
全自動のり製造機で好き上げられたのり製品

漁場の環境(漁場が広い、のりの生長速度が速い等)によっては一日に2回以上のり摘みを行わなければならず、この場合は8万枚から10万枚になります。1万枚で2時間ですから、乾燥にかかる時間は16時間から20時間になります。ほぼ徹夜の作業です。

僅かな仮眠で3~4日続けて働かなければなりません。各漁家が張込んだ網ののりを一通り摘み終わると、4~5日待って再びのり摘みを始めなければなりません。次ののり摘みが出来るようになるまでの間も、潮の干満に合わせてのり網で生長しているのりに美味しさを充分含ませるよう漁場ののり網の高さを調節しながら日光に当てる時間を調製しなければなりません。このような作業が4月まで続けられます。

海の状態は日々変化します。河川から海に流入する栄養成分である窒素の量が増えると、海中に浮遊している植物プランクトン(主として珪藻類)が増え、のりに必要な栄養分を横取りすることになります。そのためのりの細胞は栄養分を失い、本来の赤黒い色が緑黄色から茶色になり、やがて黄色になって最後は透明になってしまいます。当然製品の価値は下がります。これを防ぐためには、雨が降ることによって海に流れ込む河川の流量が増え、それによって運び込まれるのりに必要な栄養素の増加を待つより方法がないのです。

さらに、水産植物であるのり特有の病害(地上の植物が枯れるのと同じ状態で収量の減少と品質の低下をもたらす)も出ます。この病害を防ぐためには、のり網を海上に浮き上がらせ、のりを風に当てて乾かす作業もしなければなりません。ところが、今年度は、暖かく、降雨量が少ない気象が続いています。のりの生長に欠かせない栄養塩も少なく、暖かい海水温のために病害も発生しやすく、デリケートなのり細胞を病害から守るためのり網の管理は大変です。

また今年度は日本ののり生産数量の約60%を占める九州有明海の生産状態がいまひとつ思わしくなく、年内生産量は12億1千万枚で前年度の12億8千万枚を達成出来ませんでした。一抹の不安を感じさせる状態です。

11月19日に宮城県で新のり入札会が始まり、続いて東京湾の千葉県、九州有明海の福岡県、佐賀県でも初入札が行われました。12月末現在の全国生産数量は16億1千万枚で、昨年同期の16億9千万枚におよびませんでした。

前年度の最終生産数量は約71億枚、一昨年度は約82億枚でした。まだ、始まったばかりの、いまの段階で年内の生産数量を予測することは無理だとは思いますが、年明けの1~3月中に確りしたのりが生産出来なければ、80億枚を達成することが難しくなりそうです。

それでものりの産地価格は大きく伸びないだろう、と見るのが大方の予想です。その原因の最も大きな要因は、のりが「天産物」から「一般加工食品」と同じような産物として見られるようになっているからです。今でものりは自然条件に左右されながら生産される天産物で「嗜好食品」です。従来は、天産物として自然の条件に曝(さら)されて育つ食品であるために「価値」が高く、生産状態によって価格の上下変動が激しかったのですが、現在は産地価格の上下変動は少なくなっており、1枚当りの全国平均価格は10円相当です。

この事が産地の若い人たちの生産意欲を減退させており、後継者の減少、ひいては今後ののり養殖漁業の減退につながるのではないかと懸念されているところです。

2 販売価格の課題について

「のりの「価値」再評価(価値を高める)活動を | 産地を追って | 産地リポート」ページのトップに戻る