産地情報 | 産地リポート
【平成24年9月25日掲載】
今年の4月末で全国ののり生産は終わりましたが、早くも8月下旬から新のり生産のための準備が始まりました。アッという間の4ヶ月でした。
この間の動きを見ると、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた全国5番目ののり生産地宮城県は、大きな被害にもめげず、前年度約60名ののり漁家が「“みやぎ寒流のり"は1年たりとも生産ストップ出来ない、待っている人がいてくれる。」と頑張り、最盛期の18%程度ではありますが1億3千万枚の生産を挙げ、その勢いは今漁期の準備にも及んでいます。
ところが、今夏は九州北部地区豪雨のため九州有明海全域で流木、漂流物、泥流の被害が発生し、今漁期の準備が間に合うのか大変心配されました。
しかし、のり養殖漁家(生産者)は実に力強く「何とかなるべさ!」(宮城)「負けとられんタィ」(九州有明海)の掛け声で、それぞれ復旧へ走り始めました。その様子を取材しました。のり生産者の心意気を、まず北から見てみましょう。
宮城県下130名体制で新海苔生産へ
新のり生産の全国トップを切って、宮城県下で新のりの採苗(のり網への種付け作業)が始まりました。
宮城県漁協の調査によると、今年の新のり生産漁家は約130名になりました。昨年の61名の約2倍、最盛期平成21年度216名の6割にまで戻して来ました。
大震災で乾のり製造機(全自動乾のり製造機とものり製造乾燥機とも標記、以下乾のり製造機と記載)のり網などの資機材を失くしており、平成21年当時には197台あった乾のり製造機は、この漁期に使えるのは新たに購入した機械を含めて65台に過ぎません。そのため、4~5人が1台の機械を使う共同作業になります。
従って、作業が思うように捗(はかど)らないことも考えられます。このため宮城県漁協では、この状況を勘案し、今漁期(平成24年10月~翌年4月末)ののり生産枚数を、最盛期である平成21年度の約半分、3億5千枚相当になると見ています。
宮城県下の新のり採苗は、8月25日から9月上旬まで県下各地で順次始められました。
これは、陸上採苗という方法で、直径約3メートルから、大きなものは直径6メートルほどの大きな鉄車輪(通称・水車)にのり網20~40枚ほどを重ね巻きして、防水ビニール製やコンクリート製の水槽の中にのりの胞子が潜り込んでいるカキ殻を吊り下げて、水車を回転させながらカキ殻から水槽の中に放出されるのり胞子(のり種)をのり網に付着させる方式です。
9月8日午前5時に仙台市内を出て、自動車で、宮城郡七ヶ浜町花渕浜という漁港に向いました。1時間あまりで現地に着きましたが、すでに採苗が始まっていました。こちらでは、直径6メートルはあろうかという水車にのり網(幅1.2メートル、長さ15メートル)約13枚を重ね巻きし、水槽の中を回転させていました。
陸上採苗の水車が回転している棟の通路を隔てた海岸沿いに、のりの作業場(加工場または製造工場とも標記、以下作業場と記載)が新築されていました。6月中旬に訪れた際に、地鎮祭が終わり、御幣が立っていた場所でした。