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リレーエッセイ 2013・秋
海苔の香り 2/2/天野 秀臣
海苔の香りを楽しむ

お茶漬けを食べる時に、海苔茶漬けが好物という方も沢山いて、多くの方が海苔の香りを楽しんでいます。韓国では、二日酔いの日の朝食として「おかゆ」を食べる時に、緑藻のカプサアオノリを入れてその香りを楽しむ人がいます。カプサアオノリの香りはジメチルスルフィドを主成分とするので、海苔よりずっと強い香りがします。その他、香りの強い料理といえば、酢を使ったものがあります。口に入れると大変すっぱい酢ですが、酢は揮発性が強い、即ち、香りが強い調味料です。この揮発性は食材の香りを引き立てることが知られています。海苔を酢飯に巻いて巻き寿司を作ると、白飯を海苔で巻いて食べるよりはるかによい香りがします。酢の香りで海苔の香りが引き立つのでしょう。酢の香りは主成分である酢酸の香りによるものですが、海苔の香りとは相性がよいのです。

海苔の香りの変化

海苔は保存しやすい食材ですが、上手に保存する方法を知って実行している家庭は意外と少ないものです。短期間で食べきれない時は、湿気と光を避け、できれば冷蔵庫に保管するのがよく、さらに長期の保存には冷凍室を使用することがお勧めです。ただし、冷蔵庫や冷凍室から出した海苔は、温度が室温に戻るまで袋を開けないことが大切です。
このように保存しても、何かの事情で海苔が変質するといわゆる“ひね臭”と呼ばれるいやな臭気を感じるようになります。海苔の変質時には、特に悪臭成分のメチルメルカプタンが徐々に増加し、ジメチルスルフィドが減少します。従って、市販の海苔製品の袋や缶では光を避ける包装材の使用や、乾燥剤や不活性ガスの封入などの工夫がなされているのです。

おわりに

今年も海苔養殖のシーズンが始まりました。海苔の香りは沢山の物質の混合したものです。その香りは多くの食材の中では“どぎつくない”、どちらかというと淡白で穏やかな部類に入ります。この淡白さが他の食材のおいしさを邪魔しないことになります。特に和食との相性がよいので、食べる時に味だけでなく香りも楽しみながら、いつか経験した楽しかったことを思い出したいものです。

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執筆者

天野 秀臣(あまの・ひでおみ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重県保健環境研究所特別顧問、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士

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