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リレーエッセイ 2014・秋
海藻の栄養 -ミネラル- 2/2/天野 秀臣
海藻食によるミネラルの摂取

表3に私たちが日常的に食べている海藻のうちの主なものを示しました。この表は私たちが1日に1回、小鉢や海苔巻きのような海藻料理を食べた場合に、それら海藻だけでもミネラルの1日当たりの必要量をどの程度充足しているかを推定したものです。1回に食べる海藻の量には個人差があります。また、同じ海藻でも収穫した季節や地域、加工法や調理法によってミネラルの含有量は異なります。そこで、調理する前の素材としての海藻のミネラル含有量を文部科学省「五訂増補日本食品標準成分表」から、我々が1日に必要とするミネラルの量を厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」から引用し、表3の欄外の男女別の体重や年齢などの条件で充足率を推定してみました。従って、表中の充足率はおおよその数値とお考えください。

※表をクリックすると拡大します

表3.   食用海藻によるミネラルの摂取

乾し海苔の場合、海苔3g(全形1枚)ではミネラル含量には特段に目立ったものはありませんが、全体としてバランスよく含まれています。素干しワカメでは、多量ミネラルのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの充足率が大きいです。素干しマコンブでは、多量ミネラルのカリウム、カルシウム、マグネシウムと女性でのナトリウムの充足率が大きいです。干しヒジキは、カリウム、カルシウム、マグネシウムの充足率はかなりありますが、特に鉄の充足率が高いことが特徴的です。学校給食などでヒジキが使われるのは、伝統食品を食べることと同時に、鉄含量が高いことも一つの要因かと思われます。素干しヒトエグサでは、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、女性の場合の銅の充足率が優れています。私の経験で極めて稀なことですが、ヒトエグサが苦いという感想を述べた消費者がいたことがありました。マグネシウム含量が多いことと関連があるのかもしれません。塩蔵、塩抜きオキナワモズクでは水分含量が高いため、ミネラルの充足は期待できません。素干しアオノリは、鉄、および女性でのマグネシウムの充足に役立つようです。

最近、海藻(特にコンブ)のヨウ素の過剰摂取の害を懸念する報告もあります。一方で海藻のヨウ素は調理後には調理前の含量のおおよそ1/10になるとの研究もありますので、ヨウ素に関しては、海藻の加工法、調理法を含めてさらに研究が進むことが必要でしょう。

おわりに

このように、一食当たり少量の海藻を食べるだけでも何種類ものミネラルの充足に役立つことがお分かりいただけるかと思います。しかし残念なことに、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、20歳以上の1日1人当たりの海藻摂取量は、5年前の平成19年は12.1gであったものが、平成22年は11.7gに、平成24年は10.5gにと確実に減っています。海藻は優れたミネラル源であるのみならず、野菜や果物などの陸上植物がもっていない栄養素も多いので、食べる量がこれ以上減少しないようにしたいものです。我々は一日に3回食事をする時に、動物性や植物性の様々な食材を食べて栄養バランスをとっています。熱中症の危険時には緊急に水分と塩分を補給することは必要ですが、日常生活では一つの食材に偏らず、海藻を含めて様々な食材を利用することが大切です。

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執筆者

天野 秀臣(あまの・ひでおみ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重県保健環境研究所特別顧問、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士

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