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リレーエッセイ 2017・春
海藻の粘質物 2/2/天野 秀臣
海藻多糖類を用いた介護食

食品として海藻を食べる時、粘質物は私たちの食感に大きな影響を与えます。食品は食べた時の“のどごし”がよいことが重要です。特に麵類の場合は“のどごし”が悪ければ致命的です。新潟県の有名な“へぎそば”を食べた方も多いでしょう。海藻のフノリをつなぎに使用していて、大変滑らかなものです。滑らかさはフノリの粘質物フノランによります。私も初めて食べた時に感激したことを未だに覚えています。

海藻の多糖類を用いた食品には、古くから寒天、ところてん、おきゅうとなどさまざまなものがありますが、最近は多糖類の物理的な性質を利用した介護食が市販されています。高齢者にとって飲み込みにくい食品は、ゆで卵の黄身、焼きいも、雑煮の餅、カステラなどです。いずれも水分が少なく、飲み込むときにのどに詰まりやすいためです。毎年正月には雑煮の餅をのどに詰まらせた記事を目にしたことがあると思います。このため、介護食用寒天、介護食用ソフト寒天、アルギン酸塩、ローカストビーンガムを混合したカラギーナンなど、軟らかいテクスチャーの食品をつくるための海藻由来の多糖類が開発され、高齢者社会の食生活に貢献しています。

おわりに

海藻も野菜もそれらの粘質物はほとんどが食物繊維です。人の栄養では、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルを五大栄養素といいますが、最近は食物繊維を含めて六大栄養素とよびます。海苔のポルフィランも食物繊維としての効用が報告されていますが、近頃はそれに加えて、免疫や抗アレルギー効果、抗炎症作用などの研究が進んでいます。多様な海藻多糖類が今後どのように利用されていくか、その将来が楽しみです。

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執筆者

天野 秀臣(あまの・ひでおみ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重県保健環境研究所特別顧問、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士

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