はじめに
海藻は一般に、低タンパク質、高炭水化物といわれ、脂質が少ないこと、食物繊維が多いことから、ダイエットによい食品として知られています。筆者は学生時代に、海藻を穀物のような食料として使えないだろうかと考えていた一時期がありました。そう考えた理由の一つは、図1から図5に示すような植物種子から得られる植物油の存在でした。いずれの油も種子の胚芽部分に多く含まれています。しかし海苔は隠花植物で、花が咲かず種子もありません。私たちの食料として使うためには、3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)が十分含まれていれば理想的です。海苔の場合、葉体に含まれる窒素含有量から計算される粗タンパク質含量が、多いものでは海苔乾燥重量の40%程度に達することがしばしばあります。
しかし、大豆のようにタンパク質を固形物として多量に得ることはできません。海苔のデンプンは紅藻デンプンとよばれますが、含有量が海苔乾燥重量の0.4%~3%程度と考えられているので、炭水化物源として海苔を利用することはできません。脂質含有量は海苔乾燥重量のおおむね4%以下です。これらの含有量を知った時に、私は海苔を穀物、畜産物、魚のような何らかの食料にしてみたいとの夢を棚上げにせざるを得ませんでした。
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しかし、その後の仕事の中で、海苔には他の海藻や穀物とは違う特徴的な脂質や脂肪酸があることを知るようになりました。
次ページに海苔の脂質関係について簡単に紹介いたします。