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リレーエッセイ 2018・春
ヒトエグサの思い出 1/2/天野 秀臣
はじめに

海苔の佃煮は、古くから日本人の人気食材の一つで、温かいご飯によくあい、食欲増進に役立ちます。特に、子供たちには人気のあるおかずの一つです。この海苔の佃煮の原料は、最近は一部でアマノリ類だけを原料にしたものや、ヒトエグサにアマノリ類を混ぜたものなども見かけるようになりましたが、主流は依然として緑藻ヒトエグサです(図1)。ヒトエグサは香りがよいこと、佃煮にしても「かさ」が減りにくいこと、葉体が柔らかいことなどから佃煮に適した原料として長年使用されてきました。この佃煮の色は黒色に近いものです。海で養殖しているものや収穫後乾燥したヒトエグサは緑色なのに「なぜ海苔の佃煮は黒色ですか」という質問を時々受けます。その答えは、「佃煮製造時に使う醤油の色で黒色になっている」ということです。ヒトエグサは波の静かな内湾で養殖(図2)されていますが、その生産量は年による変動が大きく、最近の全国生産量は乾物で600~700トン前後です。三重県が全国生産の約70%を占めます。その他、福島、静岡、愛知、徳島、高知、愛媛、長崎、鹿児島県などが主な生産地です。

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図1 ヒトエグサ葉体
図1 ヒトエグサ葉体
図2 ヒトエグサの養殖風景(三重県英虞湾)
図2 ヒトエグサの養殖風景(三重県英虞湾)
人気者になったヒトエグサ

生鮮状態のヒトエグサは、春3月初旬ごろから4月中旬にかけて、鮮魚売り場でトレーにパックされて売られています。この頃には、ワカメとそのメカブも同じ鮮魚売り場に並びます。両海藻ともに海の中の春の訪れを知ることができるよい例です。この時のヒトエグサのトレーには、「あおさ海苔」、「青のり(ヒトエグサ)」などと書かれていて、売っている緑藻がアオサか、アオノリか、ヒトエグサか判断に迷います。本来、アオサ、アオノリ、ヒトエグサはそれぞれが異なる種類の緑藻ですが、ヒトエグサは長年の習慣で地域によってさまざまな名前で流通するので、紛らわしいことになります。私自身、売られているものが本当は何であるか、トレーの裏の表示で原材料名を確認したくなります。ここ何年か前から、乾燥ヒトエグサが食堂、回転寿司、その他の飲食店で味噌汁や澄まし汁に入れて提供され、人気メニューになっています。それ以外の食べ方として、天ぷら、ヒトエグサを入れた卵焼き、しゃぶしゃぶ、雑炊、その他和風、洋風、中華風、韓国風など、たくさんの料理があります。自分の好きな料理を見つけ楽しむのもよいと思います。

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