10月24日(木)に本会評議員の半田亮司さん(福岡県連合海区漁業調整委員会会長)の案内で、野外採苗が行われている福岡県有明海のノリ漁場を見学しました。九州地区は野外採苗が主体ですが、福岡県有明海は100%野外採苗で、かつ県下一斉に採苗が行われます。
今漁期の野外採苗は10月18日に開始され通常であれば3日程度で終わるのですが、本年は高水温で難航、1週間をかけて概ね終了に向かっているとの説明を受けました(後日無事終了の連絡を戴きました)。
野外採苗はノリ網を24枚重ね支柱に張り込んで行います。このノリ網にはカキ殻糸状体が装着されていて、ノリ芽の着生を確認後、カキ殻糸状体を外します。近年は18枚重ねもあるとのことです。
以降は育苗(いくびょう)、冷凍入庫、秋芽(あきめ)網生産の行程に入りますが、概略を述べるとノリ芽の成長に合わせてノリ網を周囲の空いている支柱に展開して3枚重ねにし、さらにノリ芽が5cm程度に成長すると秋芽網生産用に1枚とし、残りを冷凍網生産用にマイナス20℃の冷凍庫で保管します。この間諸般の作業がありますが、採苗から冷凍入庫までが約25日、採苗から秋芽網生産の摘採(てきさい)開始までが約30日と言われています。
写真1から4は、福岡県水産海洋技術センター有明海研究所(尾田成幸所長)の許可を戴いて沖合に福岡県が設置した観測塔(漁場環境データを自動的に測定し発信するための施設)から撮影した写真です。10月24日(木)は採苗中のため、写真2と3の中央部に小さく採苗中のノリ網が見えますが、周囲の支柱は空であり、ノリ生産期の風景とは異なっています。
また、見学途中の漁場でノリ生産者の古賀祐哲さん(福岡県両開漁業協同組合理事)にお会いし、許可を戴いて採苗中のノリ網の近景を撮影させて戴きました。写真5と6がそれです。まだノリ芽はごくごく小さくノリ網しか見えませんが、30日後には葉長30センチの立派なノリに成長し、今漁期のノリ生産が始まります。
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撮影:
写真1から4
2024(令和6)年10月24日午後 福岡県水産海洋技術センター有明海研究所(尾田成幸所長)の許可を得て沖合に福岡県が設置した観測塔から一般財団法人海苔増殖振興会が撮影
写真5と6
2024(令和6)年10月24日午後 古賀祐哲氏(福岡県両開漁業協同組合理事)の許可を得て一般財団法人海苔増殖振興会が撮影
【令和6(2024)年11月15日掲載】
10月5日(土)に千葉県新富津漁業協同組合の陸上採苗が行われました。採苗(さいびょう)は「種付け」とも呼ばれ、来年3月(地域によっては4月)まで続く令和6年度ノリ漁期のスタートを告げる作業です。
種付けされたノリ網は冷凍庫で一時保管され、その後漁場に張り込まれます。組合によれば、採苗開始は例年9月20日頃ですが、本年は水温の低下が遅く10月に入ってからの開始となったとのことでした。
採苗には陸上採苗と野外(海上)採苗の二つの方式があり、東日本地区と瀬戸内地区では陸上採苗が、九州地区では野外採苗が主力となっています。例年9月中旬から陸上採苗が始まり、10月中下旬に行われる野外採苗で全国の足並みが揃い、作業は育苗(いくびょう)、そして摘採(てきさい)へと移っていきます。
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撮影:令和6(2024)年10月5日午前 新富津漁業協同組合の許可を得て一般財団法人海苔増殖振興会が撮影
【令和6(2024)年11月5日掲載】