さて、昨年末に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、さらには2020年の東京オリンピック開催に向け、諸外国より日本食への関心が日々高まっております。こうした背景もありますので、業界と致しましては内外を視野に入れ、海苔という日本の伝統食材に対しての素朴な疑問や食べ方、商品価値等を見直しした上で、より消費者目線に立脚した普及PR努力を心がける時なのではないのでしょうか?
加えて、農林水産省は攻めの農林水産業を実施するためのイノベーションの創設に向けた取り組みの一環として、昨年来「医学・栄養学との連携による日本食の評価」にかかる研究戦略検討会を開催し、このほどその研究戦略案をまとめ、公表しております。それによれば伝統的日本食の有する健康維持・増進効果を評価し、「日本食」に関する科学的エビデンスの不足に対する諸外国からの懸念を払拭するためにも、その研究成果を内外に情報発信していくための研究戦略であることを強調し、日本食の特徴的食品として、魚介類・海藻などを挙げ、評価研究対象としていく方針を示しております。
今日、海苔もご多分にもれず、魚離れ同様に家庭での海苔離れが指摘されて久しい年月が経過致しております。「日本食」への関心が高まる中、業界内でも消費面での対策として、健康志向への訴求、食べ方提案、美味しい海苔の訴求、国産製品の安心安全性の訴求(2011.11.10全国漁業協同組合連合会「のり養殖の現状と課題」より)などの訴求ポイントが掲げられ、努力が続けられておりますが、農林水産省による前述の異分野融合研究による研究成果の情報発信などは、今後の動きとして大いに期待したいものです。
ゴールデンウィークという絶好の行楽シーズンを迎え、平素からの海苔に対する雑多な思いを、昨今の行政サイドの話題とともにリレーエッセイとしてここに綴らせていただきました。
執筆者
齋藤 壽典(さいとう・としのり)
一般財団法人海苔増殖振興会会長、一般社団法人大日本水産会顧問、水産物・水産加工品輸出拡大協議会会長