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リレーエッセイ 2016・春
興味深い記念日の数々 ―「海苔ウィーク」に思いを寄せて― 3/3/齋藤 壽典
海苔ウィークに思いを寄せて

さて、ここで今回本題とする「海苔ウィーク」に話題を転じることと致します。「海苔ウィーク」は2月3日「節分の日」(恵方巻きの日)と2月6日「海苔の日」を含む1週間の事を言います。

まず「海苔の日」ですが、前記大阪市水産物卸協同組合HPの「魚の記念日」に記された2月6日「海苔の日」によれば、大宝律令が制定され、海苔が年貢になったのが大宝2年1月1日であり、これは現代の西暦で702年2月6日にあたることから、2月6日を海苔の日に制定したとあり、これを制定した全国海苔貝類漁業協同組合連合会(全海苔連)HPにも全国海苔漁民の総意として1966年(昭和41年)「海苔の日」を2月6日と定め、以来毎年記念行事を実施しておりますと記されており、事実、翌1967年(昭和42年)2月6日に第1回の記念行事が行われ、当時の東京・永田町のヒルトン・ホテル(現ザ・キャピトルホテル東急)において盛大な記念祝賀会も開かれております。

筆者が勤務しておりました大日本水産会が発行しておりました当時の日本水産新聞によれば『2月6日は海苔の日です-と全海苔連(庄司 嘉会長)は同日、第1回の記念行事を行った。東京杉並の老人ホーム浴風園に、ノリを寄贈、おいしいノリを味わってもらうとともに、盛り場にアドバルーンを上げ、団地に宣伝カーを繰り出し、午後2時からは東京・永田町のヒルトン・ホテルでノリの日制定祝賀会を開いた。祝賀会にはノリ関係者が多数出席、まず庄司会長が「生産拡大とともに、消費の促進をはかり、価格の安定に結びつけなければならない」とノリの日制定の趣旨を説明し、「ノリは老化現象を防ぎ、利口になることから脳理(ノリ)の日と呼びたい」と挨拶すれば、川島前自民党副総裁も「外国へ必ずノリを土産に持っていき、説明を加え食べさせるようにしている。ノリの海外宣伝に一役買っていることになる。スカルノ大統領などはノリ巻きセンベイが好物だよ」と挨拶、拍手をあび、好調なノリの日スタートであった。』と写真付きでその盛り上がりを伝えております。

そうして生まれた「海苔の日」が存在する一方で、例年、節分(2月3日)を迎えますと全国至る所において、スーパーなどの食品売り場(写真参照・恵方と賑わう恵方巻きの売り場)には恵方巻が陳列されますが、そのスペースも年を追うごとに拡張し、今や豆まきを凌ぐほどの風物詩と化しております。加えて恵方巻は海苔の太巻きですし、この期間だけでもかなりの本数が消費されるはずですので、使う海苔の枚数も相当な数になるのではないでしょうか。

この恵方巻、その年の商売繁盛や無病息災などを歳徳神様にお願いするため、恵方(因みに今年は南南東)を向いて黙々と太巻きを丸ごと一気に食べるのが習いと言うのですから、これほど海苔の消費拡大にとって有難い風習はありませんよネ!さらに昨今では「セレブ巻き」と称する1本1万円のものや、松阪牛や伊勢海老などの高級食材を巻いた1万円超のものまで出現し、話題性にも事欠きませんので、この時節、海苔業界にとっては大いに宣伝効果を高めるチャンスと言えます。

顧みれば、「海苔の日」制定時に、当時の浅海増殖研究中央協議会殖田三郎会長(東京水産大学名誉教授・農学博士、水産植物学専攻、当時のノリ研究及びノリ生産指導の第一人者)が寄稿文の中で『「海苔の日」を定めるのは海苔を記念すると同時に大いに賞美宣伝することが狙いであろうと思います。賞美宣伝するだけならば宣伝に都合のよい時期[期日]を選べばよいわけですが、記念の意味があるので歴史的根拠も考慮に入れねばなるまいと存じます。(中略)海苔が実際的に年貢として徴収されだしたのは大宝2年です。大宝2年は、史学研究会編、日本史年表、和暦西暦対照表[陽暦換算]によると702年2月6日に始まっておりますから、此の日すなわち2月6日を「海苔の日」にしたら記念の意味をいかすとともに称美宣伝の時期としても適当ではあるまいかと思いますが如何でしょうか。』と記しております。

まさにこの意を受け、現在2月3日の節分「恵方巻き」と2月6日の「海苔の日」が含まれるその週を業界では海苔ウィークと称し、例年、全国各地において種々イベント、行事が行われているようですので、和食、寿司が世界的人気の追い風を受ける今日、海外にも視野を広げた国産海苔の消費拡大と先人らが制定し広めてきた記念日に感謝の意を込め、海苔に関する各団体のキャンペーンの進展を祈念するとともに、このウィークを益々盛り上げていただきたいと、種々記念日を検索しながら思うのです。

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執筆者

齋藤 壽典(さいとう・としのり)

一般財団法人海苔増殖振興会会長、一般社団法人大日本水産会顧問、水産物・水産加工品輸出拡大協議会会長

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