海藻おしば標本のカラフルな魅力は世界的に共通して受け止められています。第14回国際海藻シンポジウム(14-ISS)が1992年にフランスで開催された際に、貧弱な海藻おしばを展示販売するブースがありました。日本からの参加者が「これいいね!」と言って買っているのを見かけたときには、「日本には、これよりはるかに立派な海藻おしばがありますよ!」と思いながら口には出せませんでした。また、1995年には南米チリで第15回国際海藻シンポジウム(15-ISS)が開催され、ここでも海藻おしばの展示が少しありましたが貧弱で、日本の芸術的な海藻おしばとは比べるべくもありませんでした。ただし、2019年に韓国済州島で開かれた第23回国際海藻シンポジウム(23-ISS)では、ランプシェードやナイトライトの装飾に海藻おしばを使った商品の展示があり(図4)、これはかなり考えた活用の仕方だなと思われました。
海藻おしば標本に関する特徴などと関連して、日本における発展の重要性について、すでに2002年7月につくば市で開催された日本藻類学会創立50周年記念大会(第3回アジア太平洋藻類学フォーラムとの合同大会)の記念特別講演で触れました。日本における芸術的な海藻おしばの作製は、日本の海藻研究者がもっと自慢してよい、世界に誇ることのできる日本の貢献であると信じます。海藻標本に含まれる光合成色素の多様性とその色彩の長期保存は、学術的にも非常に興味ある重要な課題です。かなり古くからクロロフィルの緑色の保存のために硫酸銅溶液が使われてきたことは聞いていますが、非常に長期にわたる保存は難しいようです。陸上植物の腊葉標本を含めて写真を撮って画像を保存することが世界的に進められているようですが、カラー画像の保存も色彩に関しては永久とは言えないでしょう。現在のところは、実物とそのカラーコピーを保存することが最良の方法でしょうか。
いろんな色調の海藻を巧みに組み合わせて作った海藻おしば芸術作品の一例を図5に紹介します。
横濱・野田 1996「海藻おしば -カラフルな色彩の謎-」(海游舎)掲載のおしば写真コピーの引用を快く許諾された野田三千代さんのご好意に感謝申し上げます。
執筆者
有賀 祐勝(あるが・ゆうしょう)
一般財団法人海苔増殖振興会副会長、浅海増殖研究中央協議会会長、
公益財団法人自然保護助成基金理事長、東京水産大学名誉教授、理学博士