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リレーエッセイ 2023・夏
スギ花粉症と過ごした40数年間  1/2
はじめに

筆者がスギ花粉症になったのは、東京から三重大学に赴任して数年が過ぎてからでした。当初は春先に長引く軽い風邪と思っていましたが、目の充血と痒みも始まり、眼科でスギ花粉症と診断されました。それ以後、毎年春先には微熱と鼻水と目の痒みに悩まされています。このことにつきましては、2012年夏の本リレーエッセイ「海藻の機能性あれこれ」の中で紹介させていただきました。今回は、その後の花粉症に関する経験と新たな社会情勢などについて紹介させていただきます。
30数年前に文部省(現・文部科学省)の在外研究員として、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で、海藻の組織培養の研究をする機会に恵まれました。10か月の滞在中は、スギ花粉症は出ませんでした。また、構内に多数生育していたユーカリで、夕方には駐車場に置いた車が薄黄色になるほどの花粉を浴びましたが、ユーカリによる花粉症は一切発症しませんでした。帰国するとすぐまたスギ花粉症に悩まされましたので、ユーカリとスギではアレルギー反応の抗原が違っていることを実感しました。今年はスギ花粉の飛散がことのほか多かったとの報道で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校での経験を思い出しました。筆者の近隣に、コアラ飼育で名高い名古屋市営東山動物園があり、そのユーカリ園では、餌のユーカリが栽培されています。誰でも入れる遊歩道の周囲には、ユーカリが植えてあり、5月には小さな花芽を、8月にはピンク色の開花を見ることができます。(図1,図2)

図1 ユーカリの花芽.
図1 ユーカリの花芽.
図2 花が散った後のユーカリの実.
図2 花が散った後のユーカリの実.
アレルギー反応の種類

ご承知のようにアレルギー反応には、I型からⅣ型までの4つの型が知られています。I型は即時型、II 型は細胞障害型、III型は免疫複合体型、IV型は遅延型アレルギーです。最近Ⅴ型が存在するとも言われていますが、Ⅴ型はII型と基本的には同じような反応に含められるとの説もありますので、今回はIV型までの紹介と致しました。花粉症は、I型(即時型)の代表的なものです。I 型には花粉症のほかに、食物アレルギー、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎(即時型)、ダニやハウスダストによるアレルギーなど多くが知られています。筆者の場合は、幸いにもスギ花粉症のみで済んでいます。アレルギー症状の多くは、ヒスタミンなど生体内炎症誘発物質(ケミカルメディエーター)によるものです(図3)。

図3 マスト細胞(肥満細胞)の脱顆粒イメージ図.
図3 マスト細胞(肥満細胞)の脱顆粒イメージ図.

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