
巻き寿司では具材、酢飯の味と香り、そして焼海苔の味と香りが大切
寿司の酢飯の味と香りは主成分の酢酸が主であり、焼海苔の香りは数種類の化合物が混ざったものです。図2に海苔の香りをだす3種類の化合物を示しました(梶原忠彦 (2002), 21世紀初頭の藻学の現況. 日本藻類学会;天野秀臣 (2013), 海苔の香り. 海苔百景・リレーエッセイ. 海苔増殖振興会)。β-シクロシトラールはタバコの、β-イオノンはスミレの、ジハイドロアクチニジオライドは紅茶の香りがし、巻き寿司の美味しさを引き立てています

図2.
海苔の香りをだす化合物
美味しい海苔は遊離アミノ酸が多いことが知られています。アラニンは甘さに、グルタミン酸はうま味に関係するアミノ酸です。乾海苔のおおよその遊離アミノ酸含量を表1に示しました。この表から海苔は味がよいことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
表1. 乾海苔の遊離アミノ酸含量(乾海苔100g 中)
- アミノ酸
- 含量
- グルタミン酸
- 1,330 mg
- アラニン
- 1,530 mg
- 他の遊離アミノ酸17種類
- 1,887 mg
天野秀臣 (1971) (山口勝己編, 水産生物化学. 東京大学出版会. p.180.)
おわりに
巻き寿司は慣れれば好きな材料を使って自分好みのものを作ることができます。一方、海苔の生産は気候変動による水温の上昇、魚類や鳥類による食害、海水中の栄養塩の減少など、取り巻く環境は厳しいものがあります。海苔の風味と具材の美味しさを楽しみながらいつまでも巻き寿司を楽しみたいと願っています。
執筆者
天野 秀臣(あまの・ひでおみ)
一般財団法人海苔増殖振興会評議員、三重大学名誉教授(元三重大学生物資源学部長)、農学博士
「「寿司のおいしさを引き立たせる海苔の香り -リレーエッセイ2013年・秋「海苔の香り」の第2報として- 2/2/天野秀臣 | 海苔百景 リレーエッセイ」ページのトップに戻る