太巻きの恵方巻きは、節分の日にその年の縁起の良い方角(恵方)を向いて、1本丸ごと食べる巻き寿司である。その由来は諸説あるが、商売繁盛を願う大阪商人の風習からとされ、海苔業界やコンビニ業界の販売促進活動によって近年全国に広まったと考えられる。一般的には、七福神にあやかって7種類の具材が使われることが多いようである。“軍艦巻き”はいろんな具を軍艦の形に模した焼海苔で囲んだものである。
巻き寿司は焼海苔で包んだ“おむすび”と同じようにご飯と具を海苔で巻いている。海苔以外の食品で巻く場合もよくある。いろんな食べ物を食べ物(海苔など)で包んで食べるという食べ方には興味が持たれる。韓国料理では、焼き肉を野菜で包んで食べるごく一般的な習慣がある。中国料理では、窯で焼いたパリパリのアヒルの皮(北京ダック)をネギやキュウリなどと共にパオビン(薄餅、薄いクレープ状の生地)に包んで食べることはよく知られている。広東料理では味付けした豚肉や野菜を生のレタスで包んで食べる(生菜包、豚肉のレタス包み)。春餅(シュンピン)は北京ダックのように野菜炒めや細く切った豚肉の炒め物などを「春餅」と呼ばれる餅皮で包んで食べる料理である。またベトナムでは、ゴイクン(生春巻き)やチャージョー(揚げ春巻き)、バインセオ、バインクオンなどの“包んで食べる”料理があり、これらはいずれも野菜や具材をライスペーパーに包んで食べたり、包んで提供されたものを葉野菜で巻いて食べたりする。
食品を食品で包んで食べるのは興味ある食習慣である。手のひらに乗せたパリパリの焼海苔で種々の植物性・動物性食品の具を自分で巻いて食べる“手巻き寿司”は、自分で寿司を巻く楽しみとともに寿司の美味を楽しむことができる素晴らしい食文化である。海苔(ノリ、のり)そのものとともに、海苔にまつわる食文化を大切に継承したいものである。
執筆者
有賀 祐勝(あるが・ゆうしょう)
一般財団法人海苔増殖振興会副会長、浅海増殖研究中央協議会前会長、
公益財団法人自然保護助成基金顧問、東京水産大学名誉教授、理学博士



