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リレーエッセイ 2026・春
コンブ養殖の主役  1/2
和食文化を守るために

気候変動に伴い、北日本沿岸のコンブの分布域がこの先大きく変化していくことが予測されています。昨今、天然漁獲量の減少が著しいなかで、将来の環境に適応できるコンブを作り出し、養殖生産していくことは日本の伝統食文化(=和食)を守っていくうえで必要となるでしょう。
いまや、世界のなかで一番のコンブ生産地は中国です(図1)。その中国では元来コンブは生えていなかったのですが、どうやら北海道南部からマコンブが運ばれたようで、そのタネを用いて1950年代から養殖が一気に加速しました。いまでは、年間およそ180万トンが栽培されていますが、その半量以上が南部の福建省で水揚げされています。北の海を起源とするコンブが亜熱帯域で多く育てることができるようになったのは品種改良の賜物であり、中国では現在までに選抜、あるいは交配・交雑によって作出された少なからずの系統が栽培品種として登録されています。


図1.
中国におけるコンブ養殖

日本でもコンブの交配・交雑に関する知見は少なくなく、育種への期待が日に日に高まっています。しかし、漁獲する浜によって用途や価値が異なる“銘柄”や“浜格差”は北海道コンブの大きな特徴であり、多様性の損失に繋がるような交配・交雑による系統の海中育成は避けなければなりません。さらに、選抜育種や交配・交雑育種で成果を上げるためには通常、長い時間を要します。近年の減産スピードを考えると、我々にゆっくりしている時間はありません。
私たちは、選抜や交配・交雑による育種研究を進める一方、米や果実、花卉などで実績が上げられている重イオンビーム照射による突然変異育種を行っています。この手法は、広く知られているX線やγ線の照射に比べて変異率が高く、照射された生体への影響が少ないといわれています。さらに、変異形質の固定も早く、育種年限が短いのが特徴です。昨今、養殖生産の現場では、「①秋季水温低下の鈍化にともなう、種苗の海中育成開始時期の遅れによる海中育成期間の短縮」や、「②収穫期の顕著な枯れや付着物にともなう水揚げの前倒し」が見られ、それは収穫物の品質、すなわち産業的価値に大きく関わります。そこで、国立研究開発法人や漁業協同組合、昆布食品メーカーなどと連携をして先ずはマコンブを用いて環境耐性系統-特に高水温耐性系統-の作出を始めました。これまでに“20℃を超える高水温下でも種苗として健全に育成できる系統”や、“お盆のころになっても枯れや付着物が少ない高生産性の系統”の作出で目途が立ってきました(図2)。いつかは、これらが北海道のコンブ養殖の救世主になるかもしれません。


図2.
20℃を超える海水温で種苗の沖出しが可能なマコンブ系統株

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