海藻と化粧品 2/2/堀 貫治 < 海苔百景 リレーエッセイ < 海苔増殖振興会ホーム

エッセイ&フォトギャラリー

海苔百景

海苔百景のトップに戻る 海苔百景のトップに戻る

リレーエッセイ 2026・秋
海藻と化粧品 2/2

図2. メラニンの生合成過程(T: 阻止反応サイト)

図2はメラニン生合成経路を示したもので、アミノ酸のチロシンから酸化および重合反応を介してメラニンが合成される。したがって、これらの反応を阻止する物質は化粧品素材として有用である。MAAsに限らず、前述の海藻多糖や色素タンパク質に加えて、脂質に属するカロテノイド、ビタミン類(ビタミンCおよびビタミンE)、およびポリフェノール(フロロタンニン)など多くの海藻成分が抗酸化作用をもち化粧品素材となり得ることから注目されている。特に、フロロタンニンは海藻特有のポリフェノール(エコール、ジエコール、7-フロロエコール)(図3)で構造特異性に加えて強い抗酸化作用や抗炎症・抗アレルギー作用をもつことから新規の化粧品素材としての開発に期待がもたれる。


図3. 褐藻由来のフロログルシノールとフロロタンニン
(1. フロログルシノール、2. エコール、3. ジエコール、4. 7-フロロエコール)

化粧品の香り成分(アロマ)として褐藻由来の精油(エッセンシャルオイル)の利用可能性も無視できない。アロマテラピーや海浜浴療法という言葉があるが、海の香り、磯の香り、海藻の香りに関する興味深い研究例がある。海の香りは海藻を含む種々の海洋生物が放つ香気成分に由来するが、褐藻由来の香気成分は極微量で効能を発揮する化粧用アロマとして期待されている。なかでも雌雄異株の褐藻種において雌株で合成、分泌され精子誘引活性をもつC11炭化水素系化合物からなる香気成分が数種類見出され注目されている。これら褐藻の生殖時期になると磯の丘から香りを嗅ぐことができるとのことである。図4にはコンブに見出された精子誘引活性をもつラモキシレン(オキシリピン系C11炭化水素)の化学構造を示した。この化合物は精子誘引活性に加えて、精子放出活性(精子格納庫から殻を壊し精子を放出させる活性)も併せ持つことが報告されており興味深い。この海藻由来の異性配偶子誘引物質(性フェロモン)がヒトの化粧品香料として効能を持つ日が来ることを願いたい。


図4.
コンブの精子誘引物質ラモキシレンとオーシャンスメル
終わりに

ここではNutriceuticalsを主体に述べてきたが、ここで記載した成分のほとんどは食用海藻由来であることを考えるとNutricosmeticsとしての利用も十分可能である。

また最近では、新規の化粧品素材として動植物の細胞から分泌される細胞外小胞(エクソソーム)を化粧品材料として活用する動きも見られる。現在、ヒトや陸上植物由来のエクソソームが主たる対象となっているが、海藻由来のエクソソーム化粧品が開発されることも近いかもしれない。このように、身体の内外部から取り込む化粧品素材として海藻成分が役立つ時代が来ているが、そのためにも海藻が豊富に育つ海の環境の維持管理や海藻栽培技術のさらなる進展が望まれる。

PDFファイルはこちら

執筆者

堀 貫治(ほり・かんじ)

一般財団法人海苔増殖振興会評議員、広島大学名誉教授、農学博士

海藻と化粧品 2/2/堀 貫治 | 海苔百景 リレーエッセイ」ページのトップに戻る