養殖ノリからつくられる乾海苔は19cm×21cmが標準サイズですが、岩ノリからつくられる乾海苔のサイズはいろいろで、標準的なサイズはありません。12cm×22cmのやや小型のものから25cm×30cmあるいは35cm×46cm程の大判まであります。乾海苔の価格は勿論そのサイズにもよりますが、1枚 1,000円くらいから1,700円くらいのものまであり、かなり高価です。素干しのものや瓶詰めの佃煮が「岩のり」として地方の土産物店などで販売されています。素干しのものは15gあるいは20g程度から40gや50gが1袋に入っており、10g当り1,000円前後で売られているようです。岩ノリの採集時期や生育場所・生育量は限られますから、「岩のり」は比較的高値で販売され、販売時期も限られています。昨年10月、島根県出雲市に出張する機会があり、有名な「十六島海苔」をお土産に買いたかったのですが、どこの土産物店の店頭にも「十六島海苔」を見つけることはできませんでした。店の人に尋ねてみると「この時期ではねー・・・」「出直してまたお出で下さい」と言われてしまいました。やはり岩ノリの生育時期に合わせないと、折角の珍味にも会えないのです。
なお、韓国ではスサビノリやアサクサノリ以外のノリも養殖しており、これらは「岩のり」あるいは「岩のり系」と称されています。韓国から輸入される乾海苔で「岩のり系」と言われるものは養殖ノリを原藻としており、上に述べたような日本の天然の「岩のり」とは異なります。また、日本でも淡水産のカワノリを原料としている「岩のり」と銘うった商品が市販されていますが、これも上に述べた「岩のり」とは違いますので注意が必要です。佃煮でよく混同されるのは日本伝統的な「のりの佃煮」で、これは緑藻のヒトエグサやアオノリを原料としていますので味や香りが異なります。名前に同じ「ノリ」がつくので混同されることがしばしばありますが、緑藻のヒトエグサやアオノリは「青」または「青のり」、紅藻アマノリ類は「黒」または「黒のり」と言って区別します。市販されているアマノリ類の焼海苔は緑色をしていますが、乾燥後の乾海苔は黒みがかった色をしており、これに熱をかける(焼く)と乾海苔に含まれていた赤色の色素フィコエリスリンが破壊され、緑色の色素クロロフィルの色が目立つようになるからです。ノリの色の変化については本エッセイの2013年・春「ノリの色彩いろいろⅠ」および2013年・夏「ノリの色彩いろいろⅡ」をご参照下さい。
執筆者
有賀 祐勝(あるが・ゆうしょう)
一般財団法人海苔増殖振興会副会長、浅海増殖研究中央協議会会長、公益財団法人自然保護助成基金理事長、東京水産大学名誉教授、理学博士