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産地を追って no.3 新のり生産始まる

【平成23年12月16日掲載】

1 東日本、九州から新のりたより

新のりの生産が始まりました。のりの主な産地は、宮城県、千葉県、神奈川県、愛知県、三重県、和歌山県、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県の1府19県になります。これを海域で示せば、一部例外はありますが、大部分が太平洋側の沿岸域(宮城~三重)、瀬戸内海(和歌山から大分)、有明海及び八代海(福岡~鹿児島)になります。そして、新のり生産は、気候が寒い北の地方から順に始まります。のりにとっては12~13℃の低水温の海中が住み心地が良いようで、伸び伸びと育ちます。

しかし、今年は全国的に気温の高い日が続き、なかなか水温が下がりませんでした。のりの種付け(採苗といいますが)は、10月半ば過ぎの水温が22~23℃ぐらいから始めるのが良いようですが、近年は温暖化の影響でしょうか、なかなか気温が下がらず、海水温も下がらない状態が続いています。

のりの種(果胞子)は、かき殻の中にもぐりこませて育てる「人工培養」で育成を行なっています。水深1メートル程度のプールのような水槽に海水を入れて、水温を調節しながら育てていますが、のり種も自然の植物ですから、環境に順応して生長を続け、かき殻から這い出して、自然の海で育ちたいという気持ちの高ぶりが出るようです。今年の様に、のり種が育ち易い温度までの海水温の低下が遅く、のり種をいつまでも水槽に入れて置くと、水槽の温度低下の方が海水の温度低下よりも早いので、水槽の中で種が飛び出してしまう事があります。こういう時は、水槽の海水温度をやや高めて、「まだ、寝ていなさい」となだめます。

ところが、季節の到来を識別する遺伝子が組み込まれた植物としてのりの感は鋭く、のりの種(果胞子)は水温が下がらなくても一定の時期に来ると「まだですか?」と海に出る日を待ちきれない様子を見せますので、結果的には24~25℃のやや高めの海水の中でも驚かないように、事前に水槽の温度を調節しながら、タイミングを見計らってのり種を海(漁場)に入れます。

今年も海水温の下がるのが遅くそういうことになったのですが、目を覚ましてもまだ心地よい温度になっていなかったため、幼芽期の育ちが弱く、のり芽の生長が鈍ったり、弱く育ったのり芽が流れてしまう現象が見られました。のり芽は幼芽期を過ぎると水温の低下に伴い生長を早めますが、今年は11月に入っても高水温傾向が続き、生長が遅れ既に全国ののり漁場でのり摘みが始まっていますが、生産枚数が増えていません。

のりは種付けを終わると、およそ35~40日程度で摘み取れる大きさに育ちます。のり摘みの方法は、産地によって多少の違いがありますが、大部分の産地が、午前2時頃の深夜や午前5時頃の早朝から始まります。

写真1 九州有明海ののり摘みの様子
写真1.九州有明海(佐賀県)ののり摘みの様子。この時期は午前4時頃からのり摘みが始まります。11月中旬から翌年の3月までののり摘み作業は寒風が体に応えます。写真に見る通り多くののり漁家がご夫婦一緒に作業をします。
写真2 摘み取った海苔を漁場に係留している漁船の船底の貯留槽にパイプで送り込み貯留する様子
写真2.摘み取った海苔は漁場に係留している漁船の船底の貯留槽にパイプで送り込み貯留します。この作業を数回往復して貯留タンクが一杯になると港へ帰ります。
2 のり入札会に出品するまでの動き

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