産地情報 | 産地リポート
【平成24年11月2日掲載】
いよいよ、全国ののり産地で新のりの養殖が始まりました。前回は、新のり養殖準備中の産地の動きをお伝えしましたが、海にのり網を張り込み、新のりを漁場で育てる養殖作業が始まりました。
養殖を始める作業の方法は産地によって多少の違いはありますが、今回は、日本最大ののり産地、九州・有明海の養殖作業を追いかけました。その作業は10月16日早朝(午前6時)から始まりました。その準備は、前日の15日から始まります。
のり養殖は、水温・気象との戦い
今年も長い残暑が続きました。しかし、10月に入ると厳しい残暑と同時に急に秋めいた涼しい日が訪れるなど、気象の変化の激しさに体調管理が大変でした。気象の変化の激しさが及ぼす影響はのり漁家にとっても同様で、この時期は、大切なのり種を育てている培養槽の温度管理に神経を使う日々でした。
3月ないし4月頃にのり種をカキ殻に潜り込ませ、それから養殖開始までの間、漁協管理の大きな培養場では深い水槽に吊り下げ、漁家個人の培養室の場合は浅い水槽に並べ、のり種の生長を見守ります。のり種を生長させるためには、1ヵ月に一度トラックに水槽タンクを積んで海岸に出向き、海水を汲み上げて持ち帰り、水槽の海水を入れ替えなければなりません。また水温も28℃ないし30℃程度に保たれるよう、毎日観察し、管理しなければなりません。
のり種の培養は、のりの胞子(種子)をカキ殻に潜り込ませて育てます。カキ殻の中で生長しますが、その育ち方が真っ白なカキ殻の中を縦横に走るため、黒い線状の糸を引いたように見えますので、その状態を「糸状体(しじょうたい)」と呼んでいます。糸状に走りながらカキ殻全体を埋め尽くすようになり、白いカキ殻が黒くなります。こうなるとのり種も成熟して胞子を出す状態になりますが、のりが育ち易い水温(22~23℃程度)になるまでのり種が放出しないように管理します。そのため培養槽の水温や光線の当り具合を管理するのが大変です。
のりの成育に十分な水温にまで下がると、採苗(さいびょう)用(種付用)ののり網に取り付けたビニール袋成熟して黒くなったカキ殻を通常1個ずつ入れ、そののり網を海に張りこんで本格的な養殖作業に取り掛かります。今年は、有明海のほぼ全域で10月16日午前6時からその作業が始められました。
その前日は、採苗用ののり網に括り(くくり)付けられたビニール袋にカキ殻を入れる作業に、一日中追われます。近くの人にも手伝ってもらい、家族総出の作業になります。
有明海で使われているのり網は、幅1.8m、長さ18mです。また、福岡県有明海、佐賀県有明海は全て支柱式(しちゅうしき)ののり養殖漁場で、熊本は約40%が支柱式ののり漁場です。今回取り上げているのは、九州・有明海ののり養殖の状況なので、支柱式ののり漁場の作業を紹介することにします。
のり網は30枚重ね、一番下ののり網に付けビニール袋にカキ殻を入れます。のり網には1.8mのプラスチックの網を張る横棒を渡します(通称・伸子棒(しんしぼう))。その横棒はのり網1枚に約20本が括(くく)り付けられ、その横棒にカキ殻を入れるビニール袋が6枚ずつ括り付けらます。ビニール袋には、それぞれ種付のカキ殻が1枚づつ入れられます。
そのようにのり種が入ったカキ殻を入れ終わると、ビニール袋面を中にして丸めます。これをトラックに積み、河口の港に停泊しているのり船に運び入れて、翌日午前6時の出港を待つのです。