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産地を追って no.12 家庭用需要の増進へ産地の活躍

【平成25年12月26日執筆、平成26年1月8日掲載】

1 新のりスタート価格も業務用主導価格へ

今年も新のり生産が始まりました。11月22日に宮城が初入札会を開催、続いて27日千葉、28日福岡有明、29日佐賀有明、30日熊本と11月中に相次いで初入札会が開かれましたが、10月上旬から下旬に掛けて雨台風が次々と通り抜けたため、種を付けたのり網を漁場に張りこむタイミングが難しく、やや出遅れた感じになりました。

その影響で11月中の生産枚数は昨年より少なく、11月中に入札会で落札された枚数は約3億7,110万枚で、昨年の同時期に比べると約9,000万枚少なくなっています。

また、降雨量も例年になく多く、漁場への河川からの流水量が増えたため、海水の塩分濃度が薄められ、低比重(塩分濃度の低下)状態が長引いたこと、窒素などの栄養分が増えてプランクトンが増殖して赤潮が拡大、のりに必要な栄養分をプランクトンに吸い取られて生育が順調でなかったなど、のりの育ち具合にはあまり良い環境ではなかったようです。

そのため、のり質は最上級品がやや少なく、入札価格も生産数量が少なかった割には昨年同期よりも6%ほど安い価格になりました。

のりの生産は2期作(秋芽網生産、冷凍網生産と通称されています)がほとんどです。宮城県などの気温が早く下がる地域では、8月下旬過ぎから9月上旬にかけてのり網に種を付ける作業が始まります。関東地区でも9月に入ると種付け作業が始まります。関西地区以南(以西)は9月中旬から始まり、九州地区は10月から直接海にのり網を張込んで種付け作業を始めます。

最初はのり網30~50枚程度を重ねて種付けを行い、その重ねた網をのり漁場の中でも育つ環境が良いと思われる部分に張り込み、重ねた網をのり芽の育つ具合を見ながら、10枚~30枚の重ね枚数に少なくして漁場に拡げて行き、のり芽を3~5cm位までに育てます。育ち具合を見てのり漁場にのり網を1枚張り込んで漁場が一杯になる程度の枚数を残して、それ以外ののり網は水分を切った程度で外気で乾燥させ、ビニール袋に入れて-25℃程度の冷蔵庫に保管します。

冷蔵庫に入れずにそのまま漁場に張込んで育てたのりを「秋芽(あきめ)」と呼んで、初めて摘み取る柔かいのりが「初摘み」「一番摘み」と言いますが、この秋芽から生産するのは、12月中旬過ぎまでです。その間に秋芽ののりは4~5回程度摘み取ります。

12月中旬過ぎに秋芽のりを生産したのり網を漁場から引き揚げて、冷蔵庫に保管していたのり網(冷凍網と言います)と張り替えます。冷凍網ののり芽は3~5cm程度ですからまだ若くて新しいのり芽です。こののり芽が摘み取れるほどまでに生長するためには水温も低くなっていますから10日以上掛かります。この網から始めて摘み取るのりも「初摘み」「一番摘み」と言います。

したがって、のり養殖漁期には、秋芽の網と冷凍の網から「初摘み」「一番摘み」ののりが採れますので、2期作ということになるわけです。産地によっては、最初に張込んだのり網から3月頃までのり芽が伸びて摘みごろになると適宜に摘み取る1期作のところもあります。また、冷凍網を十分量確保しておいて、張り込んだ網から3~4回摘み採ると、すぐに新たな冷凍網と取り替えて4月中旬まで何回ものり網を取り替えて生産する地区もあります。

(写真左)千葉の電子入札風景、(写真右)佐賀有明の見本値決め風景

このようにして、今年も新のりの生産が始まりましたが、のりの消費はコンビニのおにぎり原料としての需要が増えていますので、業務用と言われる外食業界の消費が多く、産地の入札価格は思うように高くなりません。今年も業務用原料としての買い進みが多く、平均価格は安く、のり養殖漁家の収入は思うように伸びないという見方が強いようです。家庭消費、ギフト消費が今より少しでも増えて、産地の入札価格の平均値が少しでも上がると、のり養殖漁家の減少も食い止めることが出来るのですが…。

2 産地、消費地での試食販売で家庭需要促進へ

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