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産地を追って no.12 家庭用需要の増進へ産地の活躍

2 産地、消費地での試食販売で家庭需要促進へ

のりの一般家庭での需要が減少しています。おにぎり、弁当、すしなど外食産業の普及によるのり需要が増えているため、「あえて家庭用商品を購入することもない」、「スーパーマーケットなどの安い商品は子供も余り食べない」などという声も聞きます。

私の会社では、九州地区ののり生産団体、商社団体の主催による九州各地の小・中学生、地域団体による親子食育教室などの催しに招かれると、当社専属の管理栄養士、元教諭、保育士などのスタッフと出掛けて行き、のり普及の活動を行なっています。具体的には「海苔の話」、「食育の話」、「絵巻すし」(花柄のデザインを巻き込んだすし作りの指導)などの教室を開いていますが、その中で「絵巻すし」に使用したのり(使用するのりは生産団体が提供してくれます)の使い残りを食べた多くの参加者方が「こんなにおいしいのりを食べたのは初めてです。どこで売っていますか?」と尋ねられることが多く、特定の生産団体や個別の企業をその場で紹介することも難しく、返答に困ることがあります。

長年イベントのお手伝いをしている経験から、このような「消費者の質問」を是非とも活かしたいと思うのですが、実情は市販されているのりが「販売価格競争」のため納入先に指定された価格に見合う品質ののりが主流になり、結果的に「低価格・低質品・おいしくない」製品を販売することになり、それが消費者の需要低下を招き、家庭用のりの需要減退にもつながっているのではないかと、強く感じるようになりました。

松阪漁協のパンフレット
松阪漁協のパンフレット

このような、のり業者の販売姿勢は、のり産業界が追い詰められて終焉を迎える段階になっても気付かないのではないかという不安に駆られる状態です。

「販売価格競争」による低質品、低価格が続く現状に歯止めをかけなければなりませんが、そのひとつの方法として考えられることは、のり生産地による「試食販売」で、生産者の顔が見える直接販売によって消費者においしいのりの味を記憶して頂くいわば初歩的な販売方法で、これに頼らざるを得ないようです。

そうした活動が全国の主要産地で地道ながら進められています。

右の写真は、三重県松阪市の松阪漁業協同組合が行なっている同漁協のり生産のオーナーになって、のり養殖の知識を深め、またのりに親しんでもらおうという取り組みのパンフレットです。

また右の写真は福岡県柳川市の両開漁業協同組合が取り組んでいる試食販売(同漁協前の敷地で開催)の様子です。この取り組みには地域の農家や食品業者も参加して、のり製品を中心に、地域産業と協同PRを行なっています。まだ2年目ですが地域の産業が手を携えた地域起しがやがて大きな力を見せ始めることになれば、その輪は次第に広がっていくことになるでしょう。

その一つの例をご紹介します。左下の写真は、6年前から始めた同じく福岡県柳川市の沖端漁業協同組合の試食販売の取り組みです。柳川市は北原白秋の生家があり、川下りで有名な福岡県有数の観光地でもあります。毎年、2月から3月の節句時期には、古くから各家庭に伝わる「さげもん」という手作りの雛飾りが飾られ県内外から多くの観光客が訪れます。その観光客に(両開漁協が)「有明海ののり産地である」ことを知ってもらおうということで始めましたが、すでに関東地区から「おいしいのりが忘れられない」と同漁協に購入申し込みが届くようになりました。

(写真左)福岡県柳川市の沖端漁業協同組合の取り組み(写真右)熊本県熊本市の河内漁業協同組合の取り組み

右上の写真は、熊本県熊本市の河内漁業協同組合の塩屋という地区ののり養殖漁業後継者の取り組みで、「おいしい海苔作り」を目指した生産者自らが手作りした商品を福岡市内で試食販売し、地域の人に喜ばれました。その販売には、熊本から人気キャラクターの「くまもん」もお手伝いにやって来て、大賑わいとなりました。

こののり養殖漁協後継者達の活動に地元の食品業者である㈱風雅が共感して活動に協力することとなり、後継者達が作ったのりを熊本の入札会で最も高い価格で落札して商品化し、のりの販売促進に協力しています。「輝(かがやき)」というブランドで、後継者達の写真入のラベルまで作って、生販の一体化を表現する熱の入れようです(写真右)。

このように、のりのおいしさを消費者に知ってもらいたいという産地の声を都市部にも届けようと、東京ののり商社の一部が活動しています。

自社の小売店頭ばかりでなく、のり加工工場や製品倉庫で販売したり、都市近郊の工場団地に出向いて地域の人を交えた試食販売、商店街の空地、駅前などを借りて、テント張りの「出張販売」を行なっています。

右の写真は、東京に本社と小売店を持っているのり商社が、自社の工場前で販売している様子ですが、東京の歴史のあるのり問屋は、店先に小売販売部門を持っているところが多いのです。

そのような暖簾(のれん)のあるのり問屋の3代目や4代目が、のりの本当のおいしさを伝えながら販売することによって、日本ののり産業を支え、産地を支援しようと努力しています。

生産地の地元地域での販売努力、都市部での試食販売による消費の拡大、このような生・販の活動が、日本ののり産業の大きな支えになっていくことを期待しています。

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