のり産業の育成を考える < 産地リポート産地情報海苔増殖振興会ホーム

産地情報 | 産地リポート

産地を追って no.17 のり産業の育成を考える

【平成27年8月24日執筆、平成27年9月10日掲載】

1 のり養殖漁業の現状

平成26年度(平成26年9月~同27年8月)の全国共販実績は約81億4,781万枚でした。共販金額は約853億5,394万円、1枚当りの平均単価は10円48銭でした。平均単価が10円台になったのは、平成15年度以来12年振りのことです。

かつては「のりの価値」も高く、祝祭日、運動会などには巻きすしなどご馳走として欠かせない商品のひとつでした。昭和40年代まではのりの養殖生産量も少なく、価格は他の食品類に比べるとやや高めでした。特に、昭和36年頃から始まった高度経済成長の時代には、のりは天然海藻で栄養価が高く、貴重な食品としての希少価値も一般に知られていましたので、のり問屋ものりに関する知識の深い専門業者がほとんどでした。

それだけに、のりという天産物は買うことが出来れば大きな利益を生む商品として、のり問屋は生産地から直接買付けていました。

また、高度経済成長期には建設ラッシュも始まり、落成のお祝い品として良質のりが使われ、盆暮れの家庭用贈答品も平均価格で5千円相当の干し・焼・味の3点セットが全国のデパートで独占販売ランキングの1~3位までを独占していました。このため上質品の生産数量が不足し、のり問屋から生産団体に対して増産を要求する声が高まり、臨海工場団地の造成による沿岸漁場の消滅とともに沖合いの深い漁場にのり網を張込んで養殖する浮き流し漁法の研究開発、採苗のり網の冷蔵保管技術による2期作の発展などで生産量が60億枚から80億枚台に増産され、昭和58年頃からは100億枚生産の時代になりました。同時に産地価格は低迷し始め、平均価格は次第に下げ足を見せるようになりました。

100億枚生産時代に入ると、産地価格の低迷とともに販売価格が低下して消費者の年間購入金額も低くなり始めました。この時期に販売価格に大きな影響を与えたのが、平成元年4月に実施された国内初めての消費税導入です。その翌年から一般食料品の低価格競争が始まり、「乱売」と言う言葉が多くの消費財産業界で聞かれるようになり、のり業界も100億枚生産時代を迎えていただけにその波に飲み込まれ、相場性の強い天産物であることが忘れられた結果、同業者の販売価格の下を潜る乱売競走が見られるようになりました。

昭和36年九州の支局担当で勤務していた時代に、当時ののり問屋長老から「のり業界は人の手にしている茶碗を叩き落してでも食べる業界だからよーく観察しておく必要がある」と教えられたことがありますが、その実態を目の当たりにする商取引の出来事を多く見かけました。

以来、生産増と産地価格の低落が始まり、低質品の安物が出回り始めのり漁家の減少、産地価格の低落、消費の減退が今日まで続いているのが現状です。

表1.年度別のり生産業態・家庭消費支出額の推移

表1を見ると、生産数量の増加とともに平均単価が下がり、漁家数の減少から家計支出の低下が連動している姿が伺えます。産地価格が下がることによって低品質による低価格商品が増え、現代の消費者の嗜好に会う様な多くの嗜好食品が出回る消費市場の中に埋もれて、のりの家庭消費が減少している事がこの表からから読み取れるようです。

2 後継者育成をどうするか

「のり産業の育成を考える | 産地を追って | 産地リポート」ページのトップに戻る