産地情報 | 産地リポート
のりの「価値」をもっとアピールしよう
のりの贈答品が少なくなりました。かつてのりは「お中元・お歳暮」の定番であり、お中元、お歳暮時期のデパート贈答品販売数量ランキングでは、長期にわたり全国主要デパートの1~3位に定着していました。
また、昭和35年頃から「高度経済成長」による建設ブームが本格化しました。普遍的な高級嗜好食品として一般の家庭で最も需要が高かった「海苔」の贈答品は、ビルなどの落成記念の引き出物とするのに「重宝」な食品として大変喜ばれていました。
このような「価値ある食品」として一般消費者に重宝がられた「のり」が、現在は贈答品販売量ランキングにも入らなくなっている状況を見ると、海苔産業界は多種の食品のギフト商品が氾濫するようになった消費動向の変化を十分に見極めるマーケティング感覚が鈍いと言わざるを得ません。
生産数量が少なく、健康栄養食品としての消費者の認識が高く「価値が高い商品」という一般的な感覚に支えられた年月が長かったこと、天産物という特殊性もあって生産数量が不安定な乾物食品として、また特殊な流通体制による商品として取扱業者が限られたため収益率が高い商品でもあり、ごく限られた閉鎖的な流通環境の中で育った産業界に安住して来たことが、一般的な食品流通の変化に対応できない体質を生み、現在なおその体質を引き摺っているところに大きな問題があると言えます。
高度成長期の需要増加に対応するために「生産量の増大」を流通業界から要求された生産者団体は、産業拡大の基盤整備のため沿岸漁場の多くが埋め立てられたことに対応して、「浮き流し養殖」という沖合漁場でののり養殖技術を開発するに至りました。また、養殖のりが傷んだときにのり網ごと取り替えて新たな養殖を開始する2期作(一部地区では3期作)を行うために、ある程度のり芽が伸びたのり網を冷凍庫に保管して傷んだのり網と張り替える冷凍網技術(冷蔵網技術ということもある)が開発され、その結果のり生産数量は増加し、昭和60年度から平成20年度までは年間生産枚数が90~100億枚に達する増産体制が続きました。
増産体制の確立とともに同業者間の販売競争が始まり、「質より価格」と言う販売競争が激しくなり、低質品を原料にした低価格品の販売量が増え始めました。いわば他社の販売価格を更に下回る販売価格を設定するという販売競争が目立つようになり、平成元年4月の消費税3%導入と同時に税込価格による実質的な乱売競争が始まりました。それにともない製品の質的低下は年毎にひどくなり、その結果消費の減退を招く事態となりました。
コンビニおにぎりの需要が増え始めると、中級品の産地価格が上昇を始め、味付けのりなどの加工のり製品の原料が低質化し、低価格販売競争が一段と激しくなりました。これらに見合う中級品以下の増産によって漁家が売り上げを増やそうとする傾向も強まり、漁場管理に時間を費やし手をかけて上質品を作っても労力に見合う収入が得られないとして、「価値あるのり」をアピールする機会が少なくなってきています。
健康志向の食生活が見直されている今こそ、「上質のり」の生産に力を入れ、もっと「価値」をPRしなければならないのではないかと思います。