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リレーエッセイ 2011・冬
海中漫歩 第一話 「性の無い麗人」 1/3/横浜 康継
「海中漫歩」について

大学院を修了したのち、29歳から63歳までの34年間、伊豆の海辺にある筑波大学下田臨海実験センターに勤務したあと、1999年4月に南三陸の海辺へ移住し、志津川町(後に南三陸町)自然環境活用センターという施設で、こどもや社会人の環境学習の相手をして過ごした。そして2011年3月11日の東日本大震災によって活動は休止状態になったが、私の研究対象は海藻なので、約半世紀にわたって海藻とつきあってきたことになる。「ワカメの研究で半世紀も?」と呆れられたりするが、我が国ではワカメが海藻の代名詞みたいになっているためなのだろう。しかし海藻は世界中に約9,000種、日本列島の沿岸でも1,500種ほどが知られているのである。しかもワカメという1種だけを相手に人生のほとんどを費やした研究者も存在する。ワカメにも生きた生物としての、味噌汁の中に漂う姿からは想像できないような、私たちヒトという生物よりはるかに複雑な「人生?」ではなく生活環がある。

生物学者は変わり者とみられがちだが、植物学者は動物学者からも変人と思われる傾向がある。魚、鳥あるいは昆虫のように動きまわることもない植物を相手に何が面白いかというわけなのだろうが、植物の中でもさらに目に見えない海中に潜み花も咲かせない海藻などを相手に、ほとんど一生を費やしてしまう人物の存在は謎に近いと言えるのだろう。そのような人物の典型といえる私が、海藻や同じように海底に暮らす海草などに感情移入しながら、筆(実はパソコンのキーを押す指)の赴くまま、夢見気分で漫然と書き綴ったところ、やはり「私は変人!」と自覚せざるをえないような拙文が何編か生まれてしまった。世の中にはこのような変人も存在する、ということを確認するつもりでお読みいただけたら幸いである。

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