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リレーエッセイ 2015・春
水産物の輸出拡大と海苔業界への期待 1/3/齋藤 壽典
水産物の輸出拡大機運高まる

このところ水産物の輸出拡大への動きが加速し、本格化しております。と申しますのも、わが国政府は平成25(2013)年8月に「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」を定め、公表しましたが、そこに掲げられた平成32(2020)年に水産物の輸出額を3,500億円に増加させるという目標の達成に向け、今日その実効性ある取組が強く求められているからです。

そのためには、平成26(2014)年の輸出額(2,337億円)を前記目標額の達成に向けて、今後も着実に増大させていく必要がありますので、水産物輸出をオールジャパンで取組む早期体制づくりが求められることとなり、業界の主要5団体(一般社団法人大日本水産会、全国漁業協同組合連合会、一般社団法人全国海水養魚協会、全国水産加工業協同組合連合会、全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会)が結集し、去る2月23日、その司令塔的役割を担うべく水産物・水産加工品輸出拡大協議会が設立の運びとなり、微力ながら筆者がその会長の重責を担うこととなりました。

当該輸出拡大協議会は、日本国内で採取又は製造された水産物及び水産加工品の輸出を行おうとする者及び水産物の輸出の拡大を図ろうとする者が主体となって行う情報の収集、交流活動、海外広報活動等の事業を連携して実施することにより、政府が定めた前記目標額の達成に向け、水産物・水産加工品の輸出拡大に資することを目的とするものです。

わが国は元来、水産物の輸出国で、高品質なサケ、カニ、ツナ等の缶詰は戦前より外貨獲得の目玉とされておりましたし、戦後から高度経済成長期に至る長きにおいてもサバ缶やそれらの品物は「GEISHAゲイシャ」ブランドとして欧米市場や西アフリカ市場において根強い人気を博していたようです。

しかしながら、ご承知置きのとおり1970年代に入り、世界の沿岸各国が200海里体制に移行したことから、北洋漁業を中心にわが国の漁業生産量は激減し、加えて急激な円高によってドル建ての輸入水産物単価が大幅に下落したことから、各生産国の水産物は世界で最たる魚食大国である日本の国内市場に向けられ、わが国は長きに亘り大幅な輸入超過国に転ずることになりました。

そして近年、わが国は少子高齢化社会に突入し、さらに食の多様化、洋風化などに伴い、わが国における食用魚介類の1人当たり年間消費量は平成13(2001)年度の40.2㎏/人をピークに減少をし続け、平成24(2012)年度には28.4㎏/人となるまでに低迷し、世代を問わず魚離れが深刻な状況となっており、国内市場は日増しに縮小の一途をたどっております。

一方で、農林水産省によれば現在340兆円といわれる世界の食の市場規模は、2020年には680兆円に倍増し、特に中国・インドを含むアジア全体で考えると、市場規模は、2009年の82兆円に比べ、229兆円へと約3倍になることが想定されるとしております。

かような背景を踏まえ、日本の水産業が持続的発展を遂げるためには、資源の適切な管理を図りつつ、所得向上を目指して収入拡大やコスト削減の取組を進めていくことが必要であり、その中で輸出の取組は、収入拡大を図る上での重要なポイントになってくるわけです。

農林水産物・食品の輸出拡大に向けた官民挙げての取組は、第三次小泉内閣時代に華々しくスタートした経緯があり、農林水産省リードの下、2005(平成17)年4月27日に農林水産物等輸出促進全国協議会(会長は故木村尚三郎東大名誉教授)が設置(筆者も当時同協議会幹事会メンバーの一員)され、農林水産物・食品の輸出額を2009(平成21)年までに「5年で倍増する」目標が掲げられるなど、輸出という「攻め」の施策に転じる機運が一気に高まりましたが、その後の円高推移やリーマンショックに伴う国際的金融危機、さらには東日本大震災の発生による原発被害にも直面し、初期目標の達成には到底及びませんでした。

それから10年の時を経た今日、安定した長期政権が見込まれている安倍内閣は景気浮上策を全面に掲げ、政権が総力を挙げて第一次産業の発展と地方創生に取組んでおり、そのための予算計上もされておりますので、この機に乗じることこそ懸案の輸出拡大実現に向けた最後のチャンスと思われます。

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