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リレーエッセイ 2015・春
水産物の輸出拡大と海苔業界への期待 2/3/齋藤 壽典
和食に対する高い国際的評価

一方で、水産物が食材としての重要な位置を占める“和食”が、平成25(2013)年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されたことに象徴されるように、日本食は世界中で急速にマーケットを拡大しております。

また、日本産の水産物は高級グルメ食材としても注目され、安心、安全、高品質という評価の下、欧米のみならず、所得向上のめざましいアジア諸国や中東においても需要が拡大してきております。

パリ市内の寿司屋
写真1.パリ市内の寿司屋

事実、ジェトロが2013(平成25)年3月に発行した「日本食品における海外消費者アンケート調査7ヶ国・地域(中国、香港、台湾、韓国、米国、フランス、イタリア)比較版」によれば、好きな外国料理の1位は日本料理とされ、回答者の83.8%が「日本料理を好き」との結果が示され、2位にイタリア料理、3位には「近隣国の料理」が評価されており、好きな日本料理の「寿司、刺身」「焼き鳥」「天ぷら」は既に定番メニューとして浸透し、今や専門店の増加やアニメの影響でラーメンやカレーも人気と記され、和食人気を裏付けており、食材としての「水産物」も総じて高い評価を得る結果となっております。

さらに、同じくジェトロが2014(平成26)年3月3日公表した新興市場の6都市(モスクワ、ホーチミン、ジャカルタ、バンコク、サンパウロ、ドバイ)における類似の調査結果においても、6都市合計では「日本料理」が38.4%と好きな料理のトップとなり、次いで「イタリア料理」15.6%、「中国料理」14.0%と続く結果が示されております。

なお、当該調査結果によれば和食が海外市場において極めて高い評価を得る一方で、「日本産品を買わない理由、問題点」に関する問では、総じて「価格が高い」ことが挙げられ、個別にみると韓国では安全性への懸念、イタリアではパッケージ・ラベルに対する問題、米国では食材の使用法や調理法がわからないという指摘がなされており、これらは今後の取組課題として大いに参考とすべき点かと思われます。

とりわけ高い寿司人気

さて、このように世界で高い評価を得ている和食の中でも定番メニューとして、とりわけ高い人気を保っているのが「寿司」ではないでしょうか?!と、申すのも欧米、アジアを中心とした世界の主要都市には必ずと言っていいほど寿司を供する和食店や専門の寿司店が多く見られますし、スーパー等においても巻物を中心とした寿司コーナーが常時設けられております。筆者も何度か訪れたフランスのパリ市内においても約800店ほどの寿司屋(写真1)が存在すると聞いておりますし、ビジネスで度々ホーチミン市(ベトナム)を訪れている知人の話によれば、同市内の日本人レストラン街(レタントン地区)には居酒屋や寿司バー(写真2)など約100店舗が営業しているとのことですので、今や寿司は老若男女を問わず各国で多大な人気を博しており、国際的に広く浸透した食べ物と言えるでしょう。

ホーチミン市内の寿司バーと居酒屋
写真2.ホーチミン市内の寿司バーと居酒屋
人気に相応しい質の高い寿司を供すべき
サーモンでも巻かれている寿司
写真3.サーモンでも巻かれている寿司(パリ市内のスーパーで販売)

これだけ人気の寿司なのですが、パリ市内でも正統派の寿司屋は1割程度で、まだまだ日本人の手に係るものは少なく、現在海外で供されている寿司の多くは、日本人以外のアジア系の方々によって供されているため、我々日本人からすると異質なものが多く、現地の食材事情にもよりましょうが、総じてシャリはベチョベチョ、マグロは褐変(かっぺん:色が黒ずむこと)するなど、とても日本人の口には合わないようです。巻物も海苔よりサーモンが主体(写真3)のようですし、巻かれる具材もしかりで、サーモンやアボガド程度のもので、寿司本来の魚介類を中心とした旬の食材による多様性に欠け、パリ市内のとあるスーパーで売られている「おにぎり」(写真4)は酢飯で握られていたと言うのですから、驚きです。もちろん海苔はほぼ韓国産とされています。

パリ市内のスーパーにおける寿司陳列棚とおにぎり
写真4.パリ市内のスーパーにおける寿司陳列棚とおにぎり

こうした懸念の裏で、例えばスペインのサン・セバスチャン市内のスーパー(AMARA)には日本人の手による寿司のテイクアウトコーナーが設けられているそうで、ここの寿司はわが同胞が食べても旨いそうですから、世の動きは想像以上に早そうです。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、「和風だし」や抹茶、柚子(ゆず)、山葵(わさび)などが料理や菓子類に食材として広く世界で重用され、食の祭典とされるミラノ万博も開催された今日、わが国もトップセールスにより、日々世界に向けて本格的な和食のPR努力が行われておりますので、この機に乗じて水産物輸出の拡大を実のあるものにし、世界の各地で人気に相応しい質の高い寿司を供していけたらと思うのです。

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