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産地を追って no.2 新のり養殖始まる

4 のり産地としての地位奪還を目指す

あの日から半年になる9月1日から3日に掛けて、仙台、石巻、気仙沼の3地区を駆け回ったわけですが、市中の道路はある程度整理されて車で走ることが出来ましたが、市中の至る所にうずたかく積み上げられた住民の資産の残存物を見ると、気が沈んでしまいそうでした。市内ののり商社も何とかボランティアの力を借りて、周辺の整理は出来ていましたが、今後の営業に大きな不安を抱えていました。その最大の不安が「風評」でした。「のり」という嗜好食品の販売だけに、どこまで営業実績を取り戻すことが出来るのか、「怖いよ」と言う声が聞かれました。

しかし、「どうにでもなれと言うことより、とにかく仕事に取り掛からねばと言う気持ちが強いのよ」と言う声に励まされ、塩釜市から松島を経て、東松島市の宮城県漁協宮戸支所を訪れました。

宮戸支所で今漁期のり養殖に取り掛かる漁家は18戸、この地区の通常ののり漁家は32戸ですから、およそ半分になります。それも、津波被害を免れた高台ののり漁家4戸ののり製造機械が無事だったため、その機械を18戸が共同で使用してのり製造を始めるということです。9月2日に訪れた宮戸支所は4月28日にも訪れていますが、その時の状況とは大きく変わっていました。

写真3 東松島市宮戸町(4月28日)
写真3 東松島市宮戸町(4月28日)
写真4 東松島市宮戸町(9月2日)
写真4 東松島市宮戸町(9月2日)

写真3と4は、いずれも同じ東松島市宮戸町の風景です。この位置の後ろ側は海岸堤防で、海のすぐ近くです。写真3は4月28日の状態、写真4は9月2日の状態です。奥に見える建物が宮城県漁協宮戸支所ですが、9月2日の写真では被災後間もない雑然としていた情景が、広々とした空き地になり、何ごとも無かったように整理されています。

ちなみに、宮城県下ののり漁家で、この漁期からのり生産を始めようと言う人は約80名で、3月までのり養殖を行っていた戸数207の38%程度になります。

この人達が来年4月末までに生産出来そうな数量は1億枚~2億枚弱と見られており、前年度までの全県下年間平均生産枚数約7億枚には遠く及ばないと予想されています。また、施設被害の大きさ、再建への資金調達、身内の死亡、行方不明によるのり漁家の減少などの影響によって、今後も予測できない動きが出て来そうです。

従って、全国的なのりの生産数量にも変化が現れるでしょう。こうした状況を考えて、宮城県漁協では、自力で復興を果たし、従来ののり産地としての全国的な地位を奪還することを目指しています。

写真5 宮城県漁協が入る宮城県水産会館(石巻市)入口に掲げられた対策本部の表示
写真5 宮城県漁協が入る宮城県水産会館(石巻市)入口に掲げられた対策本部の表示

いま宮城県漁協では「東北地方太平洋沖地震大津波被害対策本部」を設置して、復興対策を連日協議・検討しています。

3 「価値」あるのり需要拡大が発展のカギ

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