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東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 特任准教授 小山智之
1.研究課題名
ハバノリ抽出物に含まれる抗炎症作用物質の解明
2.研究目的
食用とされているハバノリの熱水抽出物中をマウスに経口投与したところ、実験的にカラゲニン溶液を皮下注射することで惹起した浮腫の形成を抑制することを見いだした。浮腫は体内の炎症反応により引き起こされていることから、ハバノリ中に炎症を抑制する成分が含まれることが推定された。本申請研究では、この成分を精製し、その作用を確認するとともに、成分の化学構造を明らかにすることを目的とした。本研究により食用海藻にあたらしい機能性が見いだされれば、食品業界ならびに一般の人々の関心を集めることにもつながり、微力ながら海苔養殖の発展にも寄与できるのではないかと考えている。
3.研究担当者氏名・所属・職名
- 小山智之 (東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 特任准教授)
- 木暮暁子 (東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 大学院生)
- 矢澤一良 (東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 特任教授)
4.研究課題名(英文表記)
Anti-inflammatory component in crude extract of Petalonia binghamiae
5.研究担当者氏名・所属・職名(英文表記)
- Tomoyuki KOYAMA (Tokyo University of Marine Science and Technology , Associate Professor)
- Akiko KOGURE (Tokyo University of Marine Science and Technology , Master Course Student)
- Kazunaga YAZAWA (Tokyo University of Marine Science and Technology , Professor)
6.研究報告要約
褐藻類カヤモノリ科の海藻ハバノリのメタノール抽出物に見いだされた抗炎症作用について、その作用メカニズムの推定と活性成分の同定を試みた。
カラゲニン皮下投与により足蹠部分に浮腫を惹起させた急性炎症モデルマウスにおいて、浮腫形成の一時間前にハバノリ抽出物(2,000 mg/kg)を蒸留水で溶解させて経口投与したところ、炎症の指標とされる浮腫の増加量をコントロール群に比べて有意に抑制した。リポポリサッカライドで刺激したマウスマクロファージ様細胞RAW264.7細胞を用いて、炎症性メディエーターであるNO(一酸化窒素)、TNF-α(腫瘍壊死因子α)、PGE2(プロスタグランジンE2)の産生に及ぼす影響を検討したところ、ハバノリ抽出物添加群において、濃度依存的な産生抑制作用が確認された。ハバノリ抽出物からNO産生抑制作用を指標として活性成分の精製を試みた結果、水溶性画分からNO産生抑制作用を示すフラクションを得た。この活性フラクションは38µg/mlの濃度でNOの産生を31.4%抑制した。TLC分析により、このフラクションに含まれる活性成分はステロール類縁体の混合物である可能性が示された。
本研究により、ハバノリ抽出物は炎症メディエーターであるNO、TNF-α、PGE2の産生を抑制することで、マウスカラゲニン浮腫を抑制する成分を含有することが示された。
7.summary(英文要約)
The methanolic extract of edible seaweed Petalonia binghamiae was screened for its anti-inflammatory activity in carrageenan-induced paw edema model mice. The crude extract significantly suppressed the formation of edema in mice by ingestion at 2,000 mg/kg. And the extract showed suppressive effects against the release of nitric oxide (NO), tumor necrosis factor-α production and prostaglandin E2 as inflammatory mediators from macrophage-derived RAW 264.7 cells in a concentration dependent manner. Bioassay-guided fractionation with suppressive effects on NO release gave a fraction with potent anti-inflammatory effect. TLC analysis revealed that the main active component is estimated to be a mixture of sterol analog.
The present study showed that the extract of P. binghamiae has suppressive components against NO release in vitro and carrageenan-induced paw edema in mice.
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