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地域特産種カイガラアマノリの自生地における生育環境の分析

独立行政法人水産大学校生物生産学科 助教 阿部真比古

1.研究課題名

地域特産種カイガラアマノリの自生地における生育環境の分析

2.研究目的

カイガラアマノリPorphyra tenuipedalisは貝殻に穿孔した糸状体から球状細胞が発達し葉状体が形成される特異な生活史を有するアマノリ類であり、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧I類に指定されている。本種の分布は、全国的にも数箇所のみで、山口県山口湾干潟域でも1997年に確認された。本種は、以前より「赤いノリ」として地元では食されており、アミノ酸含有量がナラワスサビノリよりも高く、山口県が増養殖技術を開発し、地域ブランド「紅きらら」として試験販売している。

本種は一般的に漸深帯に生育するが、山口湾の自生地では潮間帯に生育し、他の海域に比べ特異な環境にあるといえる。そのため、本種の生育特性を十分に把握できず、増養殖場が自生地周辺に限定され、冬の大潮の真夜中しか収穫できないという課題がある。また、本種が生育する干潟域は、船上作業が困難になった高齢の漁業者が活動する場として適当であり、かつ労力の少ない増養殖手法が確立できれば、漁村の活性化にも繋がると考える。

本研究では、増養殖生産の向上を目的として、山口県山口湾で自生する本種の生育環境の把握、今回は葉状体形成時期である秋季~冬季の光、水温、塩分濃度などの無機環境の測定および窒素、リンなどの栄養塩分析を行う。

3.研究担当者氏名・所属・職名
  • 阿部真比古 (独立行政法人水産大学校生物生産学科 助教)
  • 村瀬昇 (独立行政法人水産大学校生物生産学科 准教授)
4.研究課題名(英文表記)

Environmental analysis in natural habitat of Porphyra tenuipedalis

5.研究担当者氏名・所属・職名(英文表記)
  • Mahiko ABE (National Fisheries University, Faculty of Applied Aquabiology , Research Associate)
  • Noboru MURASE (National Fisheries University, Faculty of Applied Aquabiology , Associate Professor)
6.研究報告要約

山口県山口湾に生育するカイガラアマノリを対象として、晩秋~初春の水温や光量などの無機環境および栄養塩環境などを調査した。

  • ・ 水温:-0.7~18.8°C(平均±標準偏差 8.6±1.6°C)
  • ・ 満潮時の相対照度:3.7~14.7%(平均±標準偏差 6.2±3.1%)
  • ・ 栄養塩濃度:DIN 0.575~1.154 mg/L / リン酸態リン 0.197~0.487 mg/L
  • ・ 形態:倒卵形・倒披針形~円形・倒卵形、最大葉長32.5 cm(2月)
  • ・ 成熟:3月から視認
  • ・ 色調:L*値 65.40±1.42、a*値 14.52±0.91、b*値 13.54±1.26

本研究により、カイガラアマノリの生育環境を把握でき、これまで調査されていなかった光環境および底質間隙水の重要性についても明らかにすることができた。今後の本種の増養殖における適地選定に有用な知見を蓄積することができた。

7.summary(英文要約)

We investigated the environmental factors in natural habitat of Porphyra tenuipedalis from late Autumn to early Spring.

  • ・ Water temperature: -0.7 - 18.8°C (Mean ・ SD 8.6 ・ 1.6°C)
  • ・ Relative light intensity at high tide: 3.7 - 14.7% (Mean ・ SD 6.2±3.1%)
  • ・ Nutrient level: DIN 0.575 - 1.154 mg/L / PO4-P 0.197 - 0.487 mg/L
  • ・ Blade shape: obovate, oblanceolate - orbiculate, obovate / Maximum length 32.5 cm (Feb.)
  • ・ Mature: Mar.-
  • ・ the levels of tristimulus: L* value 65.40±1.42, a* value 14.52±0.91, b* value 13.54±1.26

In this study, we clarified the environments in natural habitat. Especially, light condition and porewater were not measured until now. We were able to get the fundamental data for the selection of mariculture waters in future.

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