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北里大学海洋生命科学部 准教授 小檜山篤志
1.研究課題名
スサビノリの色素変異体における変異部位の同定に関する研究
2.研究目的
養殖ノリの色彩は,乾海苔の品質を決めるうえで極めて重要である。しかしながら、ノリの色素合成に関する遺伝子レベルでの研究はほとんど行われていないのが現状である。近年、育種技術の一つとして重イオンビーム照射による突然変異育種が注目されてきていることから、これまでに共同研究者が本手法をスサビノリに適用し、色素変異体の作出に成功している。しかしながら、分離された色素変異体のDNA上のどの部位に変異が生じているのかは未だ不明のままである。そこで本申請研究では、スサビノリ変異体のDNAを解析して変異部位を同定することにより、養殖ノリの色彩に関する遺伝的制御の解明に資することを目的とする。
3.研究担当者氏名・所属・職名
- 小檜山篤志 (北里大学海洋生命科学部 准教授)
- 二羽恭介 (兵庫県立農林水産技術総合センター 主任研究員)
4.研究課題名(英文表記)
Study on identification of mutation site in the pigmentation mutant of Porphyra yezoensis
5.研究担当者氏名・所属・職名(英文表記)
- Atsushi Kobiyama (School of Marine Sciences, Kitasato University Associate , Professor)
- Kyosuke Niwa (Hyogo Prefectural Technology Center for Agricutlure, Forestry and Fisheries , Researcher)
6.研究報告要約
本研究で用いたスサビノリ緑色型変異株の葉状体は明緑色を呈しており、野生型に比べて生長は遅かった。これら葉状体の色素分析を行ったところ、緑色型におけるクロロフィル含量は野生型とほぼ同じであったが、フィコエリンスリンはほとんど含有されなかった。そこで緑色型におけるフィコエリスリンをコードする遺伝子の変異部位を同定するため、緑色型および野生型葉状体からDNAを抽出し、フィコエリスリンα (rpe・)およびβ(rpe・)をコードする領域および周辺のDNAの塩基配列を解析した結果、推定アミノ酸配列では変異が認められなかったが、rpeBの推定翻訳開始点から上流-9 bの塩基で変異が認められ、本領域がrRNAとの結合配列であることが推測された。このことから、変異体のフィコエリスリンは、mRNAに転写はされているが、翻訳に至っていない可能性が示唆された。
7.summary(英文要約)
The green mutant blades of Porphyra yezoensis in this study exhibited light green in color, and the growth was slower than that of the wild type under the same culture conditions. In the pigment analysis, chlorophyll a content of the green mutant was not different from that of the wild type, but the former possessed few contents of phycoerythrin (PE). To identify the mutation site in the green mutant, total DNA was extracted from the green mutant and the wild type, and nucleotide sequences of the genes encoding the alpha (rpeA) and beta (rpeB) subunits of the PE were determined. As the result, these predicted amino acid sequences were not different between the green mutant and the wild type. However, a nucleotide located at -9b from the predicted translation start site of rpeB gene was mutated in the green mutant. Moreover, this mutated site was predicted as a rRNA binding site. It is therefore possible that transcription of the rpeB gene is accomplished, but that the translation does not progress in the green mutant.
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