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リレーエッセイ 2012・夏
海藻の機能性あれこれ 3/4/天野 秀臣
海藻の抗アレルギー研究の開始

ある時、食品会社との新しい共同研究の話が持ち上がりました。現在の日本人は、3人に1人は何らかのアレルギーを持っているとのことです。それならば、いっそのこと誰もやっていないアレルギーに有効な海藻の研究をしてみようとなりました。私も花粉症で悩まされているので、ちょうどいい研究テーマになります。

アレルギーには5つの型があります。I 型は即時型、II 型は細胞傷害型、III 型は免疫複合体型、IV 型は細胞免疫型、V 型は抗レセプター型です。どの型のアレルギーに効果がある海藻を探すかですが、共同研究の相手は食品会社なので、食物アレルギーが含まれるI型を選びました。I 型の代表的なものは、食物アレルギー、ジンマシン、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎(即時型)、ダニやハウスダストによるアレルギーなどです。I 型は血清中にあるIgEという名前の免疫グロブリンが、白血球の一種のマスト細胞(別名肥満細胞)に結合し、次いで食品、花粉、ダニ、ハウスダストなどに存在する抗原が結合すると、マスト細胞がヒスタミンを放出し、かゆみなどの症状が現れます。抗原と結合するとすぐにアレルギー反応が現れるので、即時型と言います。

実験では、海藻の成分がヒスタミンの放出をどのくらい抑えるかを調べました。ヒト由来細胞やラットを使い、これに三重県産の各種海藻の抽出液を精製して加えたところ、アオノリなどの緑藻5種、海苔を含む紅藻15種は効果が全くありませんでしたが、褐藻は21種中7種(イシゲ、イロロ、ウミトラノオ、オオバモク、カジメ、サガラメ、トゲモク)がヒスタミンの放出を抑制し、その効果はサガラメが大変強いものでした。生体内でも効果があるかを確認するために、サガラメの粉末を食べさせたアレルギー試験用ラットでも、血清中のIgEとヒスタミン量が低下しました。

三重県志摩半島のサガラメ
写真. 三重県志摩半島のサガラメ

残念ながら最も良く食べられているワカメとヒジキは無効でした。サガラメは本州太平洋岸の静岡県御前崎から紀伊半島にかけて生育し、アラメと形は酷似するが別種の海藻です(写真)。三重県では古くからいわゆる“アラメ”として食べられていますし、関西地方にも乾物で年間200トン程度が出荷されています。

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