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産地を追って no.13 海苔産業低迷脱出へ再考の時

4 輸出の増進

貿易に関する海苔産業界の取り組みは、他の食品産業界に比べて消極的な動きに止まっています。現在TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋経済連携協定)の交渉が進められています。水産物については魚類が中心になりそうですが、中国、韓国、日本によるFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)に関する交渉が本格的になると、日本の海苔産業界にとって影響も大きくなりそうで、今後の動向が注目されます。現在、韓国、中国を含めたコーデックス(国際食品規格)委員会で検討中の「のり国際規格」(案)が、今後どのように展開するのかも注目しなければなりません。

そのためにも、日本の海苔をもっと輸出しなければなりませんが、現在のところ「輸入外貨割当て」数量に対する注目度が高く、輸出については生販団体とも積極的な活動が見られない現状です。

一部の海苔商社は中国・上海に販売拠点を置き中東から欧米市場に販売する姿も見られますが、表.3に見るように日本の海苔の輸出数量は非常に少ないのが現状です。

表3.過去5年間の乾海苔(干しのり)、焼・味付海苔(焼・味のり)輸出状況

昨年の日本の海苔輸出枚数は3,504万枚です。日本の産地共販では大きな1漁協か、生産数量の少ない県漁連の1回の共販出品枚数程度です。中国の輸出量は15億枚相当になります。韓国も35億枚強の輸出量になります。

日本の海苔輸出相手国は40ヶ国強です。その内10ヶ国程度は現地の消費需要量ですが、その他の大部分は日本人の海外駐在者の消費需要と見られています。

もちろん海外の地元需要者も増え始めてはいます。フランスで海苔を販売している商社の情報によると「焼海苔が売れている」という事です。これは、海苔の味が分かる消費者がいる、と言う事ではないかと思います。

ところで、海苔商社に輸出の考えがあるかどうかと問うと、一般的な返答として返ってくるのは「韓国や中国の海苔が販売されている地域では、価格で太刀打ち出来ない」という言葉です。海苔の「質と価値」を訴求する販売では「価格に勝てない」という事のようです。しかし、今後の国内海苔産業の発展を考えた場合、「質と価値」を世界にアピールする販売努力が必要ではないでしょうか。日本の海苔産業界は、農水産物の海外フェアーにもっと積極的に参加することが大切ではないかと思いますが、如何なものでしょうか。

4月11日から5月11日まで韓国の莞島(ワンド)で「国際海藻類博覧会」が開かれます。韓国は世界中のホテル、レストラン、シェフに案内状を出して、韓国産海藻を始め養殖漁業の実状と今後の方針をアピールするようです。大いに注目する必要があります。

表.4は輸入海苔の平成22年から同25年までの輸入状況です。海苔輸入については外貨の割り当てが行われており、輸入相手国も韓国、中国の2ヶ国に限られています。その外貨の割当数量の範囲で輸入されていますが、日本産の同質程度の輸入価格が安い事もあって、国内の入札価格が高い場合は輸入海苔への依存が強くなり輸入枚数も増え、輸入海苔の価格もやや高めになります。

表4.我が国の韓国、中国からの海苔輸入実績(平成22年~25年)

輸入海苔の数量を少なくして国内海苔の価格維持を図ったりする事は、現在の国際情勢から見てかなり難しいことです。それよりも、海外市場の需要開発への努力が大切です。日本産海苔の質と価値のアピールが少ない現状を改善し、生販団体による積極的な活動を行なう事が必要です。

国も「農林水産物の輸出促進」に力を入れている時期です。このような国の政策への対応を十分研究する必要があるのではないでしょうか。

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